現在、米国の5歳児の25人に1人が40歳までに亡くなっている。

この死亡率は他の裕福な先進国の数値の約4倍で、中国やキューバ、チェコ共和国、レバノンよりも高いと、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。

また、英紙「フィナンシャル・タイムズ」によれば、この数値は「米国のすべての幼稚園の、各クラス一児は、親より先に亡くなる」ことを意味しているという。

この死亡率の上昇が顕著になったのは、パンデミック開始後であるが、新型コロナウイルスによる影響はほとんどないとの見解を同紙ともみせている。なぜなら、パンデミック下の約3年間で、感染が原因で亡くなった米国の子供の数は、同期間に他界した子供全体の2%に過ぎないからだ。

米国医師会によって刊行される、国際的な査読制の医学雑誌「JAMA」で2021年3月に発表された記事によれば、同データが発表された(パンデミックにより学校が再開される前の)段階では、薬物やアルコールなどの過剰摂取や中毒が理由で死亡した子供の数は、新型コロナウイルスによる死亡者数の2倍以上だった。さらに、「自殺による死亡者数は3倍以上、殺人によるものは4倍以上、自動車事故やその他の交通事故によるものは5倍以上だった」。

2023年3月の同誌の記事では、米国の小児を含む若者(19歳まで)の死亡率が、2019~2020年にかけて10.7%、2020~2021年にかけて8.3%増加したことが記されている。

死亡率の増加は10代の子供の方が顕著だったが、1~9歳の小児の死亡率も2020~2021年にかけて8.4%増加している。

急増する若者の死因は、薬物の過剰摂取、銃暴力、危険な運転など外的要因によるものが圧倒的に多い。

急増した2019~2020年にかけての死亡率増加の要因のほぼ半分は銃によるもので、10~19歳の子供の銃による殺人被害は、前年と比べて39%以上増加している。

これについて、両紙とも「非常に米国特有の問題」だと述べており、健康問題よりも取り組むのが難しいという。

なぜなら、健康問題は概ね誰もが「できれば健康でいたい」と同じ考えを持っている一方で、前述の外的要因に対しては、国民の意見が分断されているからだと「フィナンシャル・タイムズ」は伝えている。

さらに、この増加する子供の死亡率に関して、亡くなっている「ほとんどは男児であり、女児はわずか」であると、「ニューヨーク・タイムズ」は書く。

男児のなかでも、殺人の犠牲者のほぼ3分の2は、10~19歳の黒人で、ヒスパニック系の同世代の6倍、白人の同世代の20倍以上になる。一方、薬物過剰摂取による死亡は、白人の小児と10代がともに、他のどの人種よりも高かった。

「米国はますます暴力的な場所になっている」

近年、米国人の死亡率の高さの新たな要因として、「学歴のない労働階級の白人の中年男性の絶望死」が注目を集めているが、同様もしくはそれ以上に、若者の死亡率の急増にも目が向けられるべきであり、早急な保護対策が必要だと、同紙は訴えている。

というのも、この米国特有の問題は20歳以下に限らず、25〜34歳の死亡率にも影響を与えているからだ。同紙によれば、この年代の死亡率は「英国や日本の同世代の平均の2倍以上」だという。

https://courrier.jp/cj/322450/