批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

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リベラルにとっては驚きの結果となった。統一地方選前半戦での日本維新の会の躍進のことである。

維新は大阪府知事・市長のダブル選で圧勝し、奈良県知事選にも勝利。大阪府市両議会で
単独過半数を獲得したうえ、他県でも議席を増やした。他方で立憲民主党は存在感を示せず、
唯一の与野党対決となった北海道知事選で惨敗した。共産も大幅に議席を減らし、右派改革勢力と左派で明暗が分かれた。

この結果は「野党共闘」の時代が終わったことを意味している。共闘は2015年に始まった。
SEALDsなど若い世代の運動が現れ、新たな政治への期待が高まった。

しかし17年に民進党が実質的に分裂すると、共闘は急速に左派色を強め始める。
結果として現在の共闘勢力は、立民と共産両党の岩盤支持層の顔色を窺(うかが)い、
一般市民の関心事から乖離(かいり)する存在になってしまった。憲法やジェンダーも確かに重要な問題だが、
まずは足元の経済や少子化をなんとかしてくれと考える有権者は少なくない。近年の左派は彼らの声にあまりに冷淡だったのではないか。

https://news.yahoo.co.jp/articles/29994cc1aa276e92f66fa060f80a2d051d2407ec