CNNの取材に応じた他の人々も帰還に消極的な意見だった。やはりナホトカにたどりついたウクライナ人のバレリヤさんもCNNの取材に、「自分たちはロシアに残る。ウクライナのことなど考えたくもない」と携帯メールで答えた。

レイモンド氏はロシアにいるウクライナ人が自由に帰国できるかどうかについて、「現段階で状況がはっきりしないことが最大の問題だ」と語った。

「当然といえば当然だが、ウクライナ国内には協力者とみなされた人々に対して絶対的な反感がある。だが実際は、今ここで問題になっているのは民間人だ……戦時中に避難しようとした人たちだ」。レイモンド氏の話では、いわゆる協力者への報復行為がウクライナ各地で報告されているという――戦闘地域を脱出する道がそれしかなかったがために、東へ逃れた人さえも、報復の対象とされる。

ウクライナ政府はロシアにたどり着いた自国民の帰還受け入れを明確にしなくてはならないと、レイモンド氏は指摘する。そうしない限りほとんどの人々は帰還しない公算が大きく、それではロシアの思うつぼになるというのが同氏の考えだ。

ウクライナ再統合省はCNNの取材要請をウクライナ検事局に回した。検事局はCNNに宛てた声明で、大勢の人々にとって「唯一安全なルートはロシア経由だった」と認めた。「当然、こうした人々は協力者とはみなされない……第三国へ渡り、現地のロシア領事館に問い合わせる必要があるが、そうすればウクライナ帰還手続きの書類が発行される」。一方ロシアに長期在留するウクライナ人が支障なく帰国できるかどうかについては、これほど明確な見方は示されていない。

ウクライナでは法律により、ロシアの占領を公然と否定したり、ウクライナ国内のロシア軍に手を貸したり、ロシアの軍事行動に支持を呼びかけたりする者は協力者とみなされ、刑罰が科される。

同じくナホトカで暮らすウクライナ人のオクサナさんは、ウクライナ国籍とロシア国籍両方のパスポートを所有しているという。一度マリウポリに戻って街の様子を見たいと言うが、ロシアの領土になったらという条件付きだ。

「ロシアのほうが状況はましだ――こっちは静かだが、それに対してウクライナは完全に混乱状態だ。ウクライナ政府のしていることがさっぱり分からない」と、CNNの電話インタビューに答え、さらにこう続けた。「私は世界中の平和を望んでいる」

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