夜のJR三ノ宮駅(神戸市中央区)ホームで、若い女性のにおいを背後から嗅ぐ不審な男。
「なんかおかしい」。直感を信じて行動し、男(36)の迷惑行為から女子高校生(17)を救った
兵庫県川西市の会社員、西谷信宏さん(39)に、兵庫県警葺合署が感謝状を贈った。(安藤真子)

 3月22日午後10時過ぎ。仕事を終え、帰路につこうと三ノ宮駅のホームに向かった西谷さんは
首をかしげる光景を目にした。

 電車を待っている若い女性の背後にまわり、首のあたりに顔を近づけている男の姿があった。
気配に気づいて振り向いた女性は困惑した表情を見せ、嫌がっているように見えたという。
女性はホームの別の場所に移動したが、男は後を追おうとうろうろしていた。

 「何してるんやろ。知り合い同士かな? でも女性は嫌がってたな…」と考えた西谷さんは
まず女性に「知り合いですか」と声をかけた。不安そうな女性は西谷さんの声かけにも肩を震わせ
「ちがいます」と声を絞った。

 「駅員に声かけたろか?」。西谷さんが女性の意志を確認すると、「はい」とうなずいた。「知り合い同士ではなく
女性は困っている」と確信した西谷さんは、うろついていた男の手をつかみ、「駅員のところに行こうか」と改札に向かって歩き始めた。

 素直に従った様子だった男は、改札が見えると西谷さんの手を振り払って逃げようとした。
必死に捕まえておこうとする西谷さんに殴りかかり、2人はもみ合うような形で改札を出た。

 「誰か駅員を呼んでください!」。改札付近にいる一般客に協力を求めるも、誰も応じることなく
傍観していたという。1人で対応するしかなかった西谷さんは、逃げようとする男に足をかけた。
男が転ぶと、覆いかぶさるような形で取り押さえた。

 男は駅員が連絡した警察官によって取り調べを受け、後に県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕された。
葺合署によると、男は「酒を飲んでいて何も覚えてない」と話しているという。

 感謝状を受け取った西谷さんは、当時を「知り合い同士でふざけていたら、声をかけて迷惑だったら
どうしようという気持ちもあった」と振り返る。行動に移した理由について「女性の困った表情が引っかかり
『見過ごして何かあったら嫌だな』と思った」と説明し、「これからも困っている人には声をかけたい」と笑顔だった。

神戸新聞 2023/4/24 05:30
https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/202304/0016276571.shtml