読売新聞 2023/04/24 15:55
https://www.yomiuri.co.jp/culture/dentou/20230424-OYT1T50221/

歌舞伎、能楽など伝統芸能の後継者不足を解消するため、国立劇場を運営する独立行政法人・日本芸術文化振興会が設けている伝承者養成制度のうち、人形浄瑠璃文楽で今年度の応募者が一人もいなかった。
応募ゼロは半世紀の歴史で初めて。

振興会は「担い手養成の継続は重要だ」として、期間を延長して応募を受け付けている。

1966年に開場した国立劇場の柱としてきた養成制度は、70年にまず歌舞伎俳優でスタート。
72年には文楽でも導入され、84年に国立文楽劇場が大阪に開場してからは、文楽の本拠地・大阪で太夫、三味線、人形遣いの技芸員になるための基礎教育を実施してきた。

応募資格は、中学校卒業以上(見込みを含む)の男性で原則23歳以下。受講料は無料で、奨学金や宿舎の貸与制度もある。2年間の研修を修了し、文楽協会と契約を結べば、技芸員として舞台に出演できる。
歌舞伎のように世襲制がない文楽では制度の意義は大きく、現在、85人の技芸員(太夫22人、三味線22人、人形遣い41人)の6割近くを同制度の出身者が占めている。

2021年度までは原則隔年の募集だったが、応募者の減少傾向を踏まえ、22年度からは毎年に切り替えた。平成期には10人を超える年もあったが、最近は3~7人で推移し、昨年度は6人だった。
今年度開講分は昨年10月~今年2月に募集したが応募がなく、締め切りを4月28日まで延長してホームページなどで呼びかけている。

振興会の櫻井弘理事(国立文楽劇場担当)は「劇場を訪れる若い観客はむしろ増えている傾向にあるので、要因が分析しきれない。
10年、20年後の文楽のためにも、何とか人材を確保したい」と話している。