台湾有事、日米で「抑止力強化」 デサンティス米州知事

米南部フロリダ州のロン・デサンティス知事は25日、都内で日本経済新聞の単独インタビューに応じた。中国と台湾の関係について「目標は現状維持だ」と明言したうえで、中国が台湾を侵攻する「台湾有事」の回避に向けて日米が結束して抑止力を高めるべきだとの考えを明らかにした。中国を米国の国家安全保障にとって「最大の脅威」と位置づけ、フロリダ州で対中強硬法案づくりを急ぐ意向も示した。

デサンティス氏は2024年の米大統領選挙に向けた共和党の有力候補の1人。日本政府の招待で訪日し岸田文雄首相らと面会した。共和党候補の指名獲得争いにまだ名乗りを上げていないが、トランプ前大統領の対抗馬となり得る。今後の去就について「現在の州議会の会期が終わるまで表明はしない」と述べるにとどめた。

対中強硬派として知られるデサンティス氏は、冷戦時代の旧ソ連と比較しつつ「自由世界への脅威という点で21世紀の旧ソ連は中国だ。中国共産党は経済的に旧ソ連よりも強い」と指摘した。習近平(シー・ジンピン)国家主席について「きわめてイデオロギー色が強く、強化した軍事力の影響を中国の国境を越えて広げようとしているのは日米や同盟国にとっての懸案の源だ」と明言した。

その一方で台湾に関して「私は米国の同盟相手だと思う。米国にとって重要な利害関係を持つ」と強調した。「繁栄する自由社会の一例であると同時に、半導体のような製品をつくることから戦略的にも重要だ」と理由を語った。

台湾有事の際には日米ともに中国と対峙せざるを得なくなる可能性があるが、デサンティス氏は「戦況が起きないように抑止することが(政策の)目標であるべきだ」と主張。「敵対行為に伴うコストがいかなる便益をも上回ると習近平氏が判断すれば、有事を避けられる」と日米による抑止力強化に期待を示した。


日米豪印の4カ国の枠組み(クアッド)や、日韓関係の改善を評価したうえで、インド太平洋地域の安定に向けた「礎石」として「極めて緊密な日米関係が必要だ」と日米同盟の意義を力説した。防衛費増額などを打ち出した日本政府の対応について「絶対的に正しい」と称賛した。

ロシアが侵攻したウクライナへの米国の支援をめぐっては、米共和党支持者の間で支援疲れの兆しが出ている。デサンティス氏も支援に慎重な発言をして、米国内で批判された経緯がある。

デサンティス氏はウクライナ軍による反攻の成功を「期待している」と述べつつ、米連邦予算の巨額の債務やインフレなどを理由に米国による対ウクライナ追加支援に慎重な立場を改めて示した。そのうえで「欧州の同盟国がもっと多くのことをする必要がある。ドイツはやっていない。欧州は日本を見習い、国防支出のよい目標を達成すべきだ」と語った。

北朝鮮に関しては「何十年も市民を圧迫してきた全体主義国家だ。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は権力の座にとどまるために必要なことを何でもやっていると思う。日本列島を越えてミサイルを発射しているのは受け入れられない」と批判した。

フロリダ州では中国語教育機関「孔子学院」を廃止したり、中国人が農地や米軍基地近くの土地を買収するのを禁止したりといった対中強硬策を進めている。デサンティス氏は中国が外国に「警察署」を設置し、中国人を監視している動きに言及し「主権国家としてこうした活動を認めるのは不適切」との見解を示した。

デサンティス氏は米国が中国の世界貿易機関(WTO)加盟を認め、「最恵国待遇」の地位を与えた結果、「中国がより問題を起こしやすくなり、軍事力を高め、裕福にそして力強くなってしまった」と分析した。中国のWTO加盟は失敗だったかと問われると「そう思う」と言明した。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2546I0V20C23A4000000/?n_cid=NMAIL006_20230425_Y