有名大学を経て大手金融会社に勤め、祖父母はナチス・ドイツの迫害を乗り越え、母は米中枢同時テロの被害に…。そんな経歴をアピールした男性が米連邦議会下院議員に上り詰めたが、全てはうそだった上、ブラジルなどでの犯罪疑惑も判明し、問題になっている。人々は「だまされた」とほぞをかむものの、実は選挙前に小さな地元紙が警鐘を鳴らしていた。 (ワシントン・吉田通夫)

男性は共和党のジョージ・サントス氏(34)。昨年11月の中間選挙で東部ニューヨーク州の3区から出馬し当選した。うそは枚挙にいとまがなく、「団体をつくって数千のイヌやネコを救助した」など微に入り細をうがつ。さらに、2008年にブラジルで小切手を不正利用した疑いで同国の捜査当局が中断していた捜査を再開するなど、複数の犯罪疑惑がある。
 当選直後から大手紙などが報じて大きな問題になると、サントス氏は保守紙ニューヨーク・ポストのインタビューで、経歴を「飾った」とうそを認めた。しかし「私は犯罪者ではない」と辞職は否定。民主党は除名の決議案を提出したが、マッカーシー議長(共和党)は倫理委員会に委ねるとして諮っていない。
 サントス氏を当選させてしまった有権者は憤る。同氏を支援したテオドラ・チョールファイアンさん(42)は「みんなに共和党に投票するよう説得して回ったのに、ひどい問題が起きてしまった」とがくぜんとした。「彼は私たちの気持ちなど考えず、ただ利用しただけの無責任な男だ」

https://news.yahoo.co.jp/byline/abekasumi/20230106-00331666