▽「何か変」。人事で感じた違和感と「作られた能力差」
 片山さんが鳥取県の総務部長になったのは1992年。総務部長は、人事や財政など県庁の中核的な役割を担う。人事に取りかかって、すぐに気付いた。「なんか変だ」。違和感の正体はすぐに分かった。管理職が、ほぼ男性だけだったのだ。
 鳥取県に出向する直前は、国で国際交流の仕事をしていたため、ギャップは大きかった。海外の政府や自治体では、男女分け隔てなく議論しながら仕事を進めているところも多い。
 「振り返って日本の組織は、おじさんばっかり。男女共同参画が進んでいる組織の方が多様な意見が出て、活気がある」
 当時、女性職員は全体の3割を占めていたが、どの部署に配属されても、担当は庶務ばかり。一方、男性はさまざまな部署で、多様な担務を経験し、約20年掛けて、オールラウンダーになっていく。多くが課長になる40歳ごろになると、男女の経験値の差は歴然で、結果、男性ばかりが管理職を担っていた。
 「これは明らかに作られた能力差だ」。まず手を付けたのは、秘書課や財政課といった中枢部署の態勢見直しだ。特に、財政課の予算編成は、年末の寒い時期が業務のピークで、徹夜で作業することもあった。「男がやる、きつい仕事」との固定観念があった。

 そこで打ち出したのは、「徹夜や長時間労働のない財政課にする」との方針だ。冬に集中する仕事を夏にも振り分け、業務を平準化した。人手を増やし、業務のデジタル化にも努めた。その上で、職員の3割を女性にすることにした。
 例えば、河川工事や土石流対策などの公共工事の現地視察。以前は冬の予算編成のさなかに、タイトスケジュールで視察も行い、負担感が大きかった。「予算を付ける際、現地を見ておかないと、どうしても机上の空論になる」。だが、予算要求されそうなものは、夏ごろにはすでに固まっている。担当課に早めに情報共有してもらい、視察を前倒しすることにした。

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