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「ペット看護師」始動 23年春から国家資格化、診療貢献に期待

ペットの看護師に当たる新たな国家資格「愛玩動物看護師」が4月から本格的に始動し、県内の動物病院でも有資格者が誕生した。動物看護師は犬や猫などペットの命を扱う職業だが、これまでさまざまな団体や専門学校が認定する民間の資格しかなかった。今後は診療補助や入院したペットの世話、飼い主への助言などを担い、活躍の場が広がることが期待される。

 「採血などに不安はあるが、診療を迅速化するため練習して自分で処置できるようにしたい」。千葉小動物クリニック(福島市)ではスタッフ3人が国家試験に合格し、有資格者となった白岩絵理香さん(26)は表情を引き締める。

 愛玩動物看護師は獣医師の指示の下、ペットの採血や投薬、個体識別のためのマイクロチップ挿入といった危険性が比較的低い獣医療ができるようになる。

 獣医師は免許があるのに対し、動物看護師は民間の資格が乱立していた。県獣医師会副会長を務める千葉小動物クリニックの河又淳院長(63)は「動物看護は人気があり、人材養成がビジネス化していた側面もある」と指摘する。

 一方、「ペットは家族の一員」という考え方が浸透し、飼育される犬や猫などの平均寿命が延びたことでペットの高齢化が進んだ。大量繁殖で十分に世話ができなくなる「多頭飼育崩壊」も問題化し、飼い主に助言できる専門的な知識が動物看護師にも求められる。

 愛玩動物看護師は農林水産省と環境省が所管し、動物と触れ合う教育活動や高齢者施設でのセラピー活動の支援、ペットショップでの指導的な役割なども期待される。資格取得には大学などで3年以上学ぶ必要があり、既に実務経験のある人は2027年までの経過措置で講習会や予備試験を経て受験できる。2月に行われた初の試験は全国の1万8481人が合格し、合格率は88.9%だった。

 資格取得で賃金や処遇が改善するかも注目される。動物看護師は30代までに結婚や出産を機に離職し、そのまま復帰しないケースが多いという。河又院長は「国家資格は動物看護師の身分を保障し、立場を守ることにつながる」と話し、資格取得を支える職場環境づくりを課題に挙げる。

 白岩さんは動物看護師の責任感を口にし「賃金が上がれば、モチベーションは高まる。資格を取得したことで、就職などの可能性が広がれば」と語る。