衆院補選や統一地方選では、外国にルーツを持つ女性候補者がインターネット上や街頭で、ヘイトスピーチ(憎悪表現)を浴びせられた。衆院千葉5区補選で初当選した自民党の英利アルフィヤさん(34)は被害者の一人。両親の出身地を巡り、ウソや誹謗ひぼう中傷が飛び交った。

英利さんは「多様な背景を持つ人の立候補をさまたげることにつながり、民主主義を脅かす。放置してはいけない」と訴える。

元国連職員の英利さんは、各国の人権侵害の事例や民主主義の状況の監視を担ってきた。「自由な民主主義は全ての人々が心理的・物理的安全を感じながら政治参加できるのが基盤。アジアの民主主義をリードすべき日本でこうしたことはあってはならない」。24日朝、駅頭での活動を終えると力を込めた。
「中国共産党のスパイだ」「千葉に中国はいらない」。今月11日の補選告示後、英利さんのツイッターのコメント欄には、虚偽情報や読むに堪えないヘイトスピーチが書き込まれた。

両親が中国の新疆ウイグル自治区出身ということに関連付けた執拗しつようなな攻撃は、昨年の参院選出馬時から、複数のアカウントにより繰り返されてきた。身体的な危害をほのめかすような内容や、事務所に直接電話してくるケースもあった。
父親はウイグル系、母親はウズベク系。父親が北九州市の大学に留学後、地元メーカーに就職し、英利さんは同市で生まれ育った。その後家族で日本国籍を取得。10歳頃から高校卒業まで、父親の転勤に伴い中国・上海や広州で過ごした。

英利さんは自分を日本人と思ったことしかない。米国の大学で学び、日本銀行や国連で勤務してから政治の世界に。政治家が一定の年代の男性ばかりに偏っている現状に違和感を覚え、「多様な人らの声を代表したい」と思ったからだ。
しかし、待っていたのはヘイトスピーチ。「改めて、自分のようなマイノリティーの属性を持つ人たちが経験している生きづらさを、選挙を通じて体験した」と振り返り、「一度流れた誤情報を訂正するのは容易ではない。言論の自由を守りながら、法整備も含めてどのような対応ができるのか考えていく」と語った。

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