https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221124/k10013902581000.html

国内初「子宮移植」臨床研究を申請 慶応大学のグループ

子宮が生まれつきない女性などに親族から提供された子宮を移植して出産を目指す「子宮移植」について、慶応大学のグループが国内で初めてとなる臨床研究の実施を大学の審査委員会に申請しました。研究グループは来年度中に移植を行いたいとしています。

「子宮移植」を計画しているのは慶応大学の木須伊織助教らの研究グループで24日、大学の審査委員会に対し「特定臨床研究」としての実施を申請しました。

臨床研究では、子宮が生まれつきない女性や、がんで摘出した女性など20代から30代の女性3人に親族から提供された子宮を移植する計画です。

そして、女性の卵巣から採取した卵子とパートナーの精子を体外受精させて凍結保存しておいた受精卵を子宮に戻し、妊娠、出産を目指すとしていて、実施されれば国内で初めてとなります。

臨床研究の審査は来年1月以降、学内の委員会で行われる見通しで、研究グループは来年度中に1例目の移植手術を実施したいとしています。

子宮移植によって2014年以降、スウェーデンやアメリカなどで少なくとも40人の子どもが生まれたと報告されていて、国内では日本医学会の検討委員会が去年7月、少数に限って、リスクを含めて十分な説明を行うことなどの条件付きで認めるとする報告書をまとめていました。

木須助教は「患者にとって大きな福音になるよう慎重に計画を進めていきたい」と話しています。

子宮移植とは
子宮移植は、親族などから子宮の提供を受けて妊娠と出産を目指すもので、海外では脳死になった人から子宮の提供を受けたケースも報告されています。

対象となるのは、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の患者や、がんなどで子宮を摘出した20代から30代の女性で、国内におよそ6万人いるとみられています。

慶応大学の研究グループによりますと、2014年に初めて、スウェーデンで子宮の移植を受けた女性が出産して以降、去年3月の時点でアメリカやチェコなどで80例余りの手術が実施され、少なくとも40人の赤ちゃんが生まれているということです。

一方で、流産したケースや移植した子宮がうまく定着せず、再び取り出したケースも報告されています。

今回の慶応大学の計画では、移植が行われたあとは拒絶反応が起きないよう、免疫の働きを抑える薬剤を投与しながら経過を確認したうえで、あらかじめ女性の卵巣から採取した卵子とパートナーの精子を体外受精させ凍結保存しておいた受精卵を子宮に戻します。

そして、妊娠しておなかの中で赤ちゃんが育つと帝王切開で出産を行い、移植した子宮は再び手術を行って取り除くとしています。

国内で子宮移植が行われたことはありませんが、おととし、慶応大学の研究グループが、子宮のないメスのサルに別のサルから子宮を移植して出産させることに世界で初めて成功したと発表しています。