電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、出遅れを指摘される日本の自動車メーカー各社が、運転席のハンドルにさまざまな機能を組み込んだ「多機能ハンドル」の開発に注力している。長年培ってきた高付加価値戦略で、先行する欧米・中国メーカーとの差別化を図り、起死回生を狙う。

 多機能ハンドルは、ハンドル部分に車内機能の各種操作ボタンを集約。オーディオだけでなく、エアコン、ナビゲーション、ヘッドライト、ウィンドウなど、従来運転席の周囲に配置されていたボタンも全てハンドル上にまとめた。

 日本のお家芸である「充実した機能」も健在だ。ドリンクホルダー出し入れボタン、採点機能付きカラオケボタン、ハンドルに内蔵したカメラで撮影した運転手の写真や映像をボタン1つでSNSに投稿できる「SNS一発投稿機能」も搭載する。

 クラクションボタンも世界最多となる8種類を備え、好みの音色や声を割り当てることができる。歩行者や対向車へのお礼やあいさつ、事故を起こした際の謝罪など、場面に応じて使い分けることで、想定外のトラブルを避けられるという。

 品質と価格の両面で長年世界から高く評価されてきた日本車だが、近年はEVシフトや自動運転機能の開発で遅れており、ガソリン車やハイブリッド車を主力としてきた日本勢は苦境に立たされている。ある国内メーカー幹部は「航続距離や自動運転レベルばかり注目されがちだが、日本製品の強みはかゆいところに手が届くおもてなしの精神。海外メーカーに比べて割高になっても、顧客満足につながる高い付加価値で勝負したい」と、巻き返しへの意気込みを見せる。


様々な機能を集約した多機能ハンドル
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