画像生成AIツール「DALL-E2」、「Midjourney」、「Stable Diffusion」などが2022年に発表され、AIを活用した画像生成技術は飛躍的に進歩した。ユーザーがテキストを使ってヒントを与えるだけで、AIが精巧で美しい画像を生成する。テンセントなどの業界大手から小規模な開発チームまで、中国のゲームメーカーはこの数カ月に相次いでこれらのソフトウェアを使用してキャラクターや背景、宣伝資料をデザインするようになった。

フリーのイラストレーターとして働くAmbeさんは、これまでゲームのポスターを1枚制作するごとに約3000~7000元(約5万8000~13万6000円)の報酬を得ていた。しかし、今年2月以降こういった仕事の機会は失われてしまった。多くのゲームメーカーがAI画像ジェネレーターを使用し、わずか数秒でイラストを作成しているというのだ。今やゲームメーカーからの依頼は、画像の明るさや(キャラクターの)体の傾きを調整するなどわずかな修正を入れる程度にとどまり、提示金額も以前の10分の1になったという。

中国のゲーム業界ではAIを使ったイラスト制作が台頭し、美術関係の仕事に就く多くの人が焦りを感じている。重慶市のあるデザイン事務所のスタッフは「以前は10人がかりでやっていたような仕事も、今は2人いれば十分だ」と話す。同事務所は中国の大手ゲーム開発会社にイラストを提供しているが、キャラクターデザインを担当する15人のイラストレーターのうち、今年に入ってすでに5人が解雇されたという。

実際、テンセントやネットイースなど中国のIT大手は、AIを利用してゲーム開発コストを削減する方法を模索している。ネットイースのアクションゲーム「永劫無間(NARAKA: BLADEPOINT)」は今年3月、自社開発のAIプログラムを使用してキャラクターの新しい「スキン」を作成する機能を一時的に公開した。ネットイースやmiHoYo(米哈遊網絡科技)はかつてゲームのキャラクターの音声にAIを使用していたが、ネットイースではすでにAI技術をゲーム動画の制作に使用し、自社素材や使用許諾を得た素材を使ってAIモデルをトレーニングしてきたという。

取材に応じた他の数名のイラストレーターも、AI画像ジェネレーターを使用して作業効率を上げるようクライアントに言われていると話す。杭州市のゲーム業界の採用担当者は、経済の減速やAIの急速な進歩などの影響で、過去1年にイラストレーターの募集が約70%減少したことを明かした。

興味深いことに、中国のゲーム業界では多くのプレーヤーがAIの生成したイラストに抵抗感があり、芸術作品の「デジタル死体」と厳しく非難しているほか、インターネット上のアート作品を作者に無断で借用する人を批判している。上海のエンジニアで、普段から「王者栄耀」や「PUBG Mobile」などのスマホゲームをプレイするJinsenさんは「消費者としては、自分が買うものは人が作ったものであってほしい。ゲームメーカーがAIで制作したと強調するものは、余計に安っぽく感じてしまう」と話す。

インタビューを受けたイラストレーターたちの話をまとめると、AI画像ジェネレーターには欠けている能力がいくつかある。例えば、ネット上で大量の類似画像を収集できるためアニメやSF風のイラストを作るのは得意だが、ニッチなアートスタイルになるとお手上げだ。成都市のゲーム開発会社の責任者Zigi Moさんは「AI画像ジェネレーターでは、特定のニーズに応えるようなデザインはできない。少なくとも弊社ではAIはまだ人の代わりになれず、補助的なツールに過ぎない」と話す。

中国でのAIの進歩を研究するJeffrey Dingジョージ・ワシントン大学助教は、AIの進歩が競争を引き起こし、新しい雇用の機会を創出するが、大量のホワイトカラーが仕事を失うことにもなるだろうと指摘、「AIは芸術家だけではなく、弁護士や記者など多くの仕事を奪うだろう」と話している。

作者:WeChat公式アカウント「手遊那点事(ID:sykong_com)」

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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