『水星の魔女』能登麻美子が狂気のプロスペラを怪演 ミオリネとスレッタの秀逸な対比も

 前話が“動”だとするならば今話は“静”。だが、静けさの中にも多くのフラグ回収があり、物語はひんやりと張り詰めた空気感が漂い始めた。ピンと張られた糸がわずかな振動でちぎれてしまいそうな緊張感。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第16話「罪過の輪」では、プロスペラの目指す理想やエアリアルの中にはエリクトが複数存在することがはっきりと示された。

 第14話のプロスペラとベルメリアの会話から始まった冒頭。プロスペラの娘であるエリクトの生体コードはデータストームと完全に同調できていたはずだったが、幼いエリクトの体は過酷な宇宙の環境には耐えられなかったようだ。
そこでプロスペラはオックス・アース・コーポレーションが開発した試作機であるルブリスを改修してエアリアルとしてエリクトの命を繋いでいた。つまり、データストームのネットワークを使って、エリクトのデータを保存しているということ。
そしてプロスペラはクワイエット・ゼロを起こすことによって、データストームを広げる(=膨大な量のデータをやり取りできる)ことができれば、「エリィは自由に生きることができる」と言っていた。

 スレッタとミオリネの温室での会話の中でそれぞれの立場が示されたのも興味深い。プラント・クエタでの出来事を謝罪したスレッタに対し、ミオリネは後悔の念に晒されていたことを告げる。
しかし、スレッタが「正しいことをした」と笑顔で言った途端、ミオリネは表情を変え「なんでそんな風に笑えるの? 私は笑えない。正しくても笑っちゃいけないよ」と激昂する。
どんな理由であれ人殺しを受け入れられないミオリネと、母親の言うことであれば人殺しを正当化することを厭わないスレッタ。まるで母親に洗脳されているかのように、ミオリネの言葉に対して表情を一切変えないスレッタは不気味だ。

 このシーンでは印象的な演出があった。完熟した赤いトマトに映し出されたミオリネと、まだ青いトマトに映し出されたスレッタの対比。親から自立しているミオリネ、まだ自立できていないスレッタの比喩表現が細かい。
それにしてもスレッタの母親への過剰な信頼はどこから来るのだろうか。

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