7年かけたシステム使わず、急造ハーシスで混乱…厚労省「詳しい経緯わからない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7f74a82eac597519f1290fe12f16e55789b49027
「デジタル敗戦」と言われた新型コロナウイルス対応で、使われなかった「幻のシステム」がある。「症例情報迅速集積システム(FFHS)」。2009年の新型インフルエンザの教訓から、素早く感染者情報を把握する目的で、厚生労働省の研究班が13年から7年かけて開発した。
【図】DXに関する国内市場の予測、コロナで伸びるとされたが…
コロナ禍が始まった20年2月、厚労省から研究班にコロナ向けにシステムを改修するようメールで指示があった。だが、導入されたのは同時期に急きょ、開発が始まった「HER―SYS(ハーシス)」だった。
FFHSではなく、なぜハーシスだったのか。厚労省の担当者は「省内が混乱していたので詳しい経緯はわからない」と話す。ハーシスの開発を主導した橋本岳副大臣(当時)にはFFHSの情報は上がっておらず、橋本氏は「必要な機能が備わっていると説明を受けていれば、採用していたかもしれない」と振り返る。
感染症対応で使われた過去のシステムは、入力項目が多いなど、自治体側の負担が重いという失敗を繰り返してきた。厚労省の元技官で、FFHSの開発を担当した北見工業大の奥村貴史教授(49)は「自治体が使いやすいよう意見交換を重ねて設計していたのに、政府は過去の教訓を生かさず、ハーシスを導入した」と指摘する。
システムに関する厚労省の認識の甘さは実際にハーシスが導入された後、浮き彫りになる。FFHSは感染者に関する入力項目を7に絞り込んでいたが、ハーシスは未知の感染症のデータを多く集めようと120に及び、入力に約30分を要した。