「数学嫌い」多い日本とインドの入試の決定的な差

国連人口基金(UNFPA)は4月19日、インドの人口が2023年半ばに14億2860万人となり、中国を抜いて世界最多になるとするデータを公表した。4月1日現在の日本の人口は1億2447万人なので、約11.5倍である。

日本の教育が「ゆとり教育」に向かって突き進んでいた1990年代半ばに、当時出版された深田祐介著『最新東洋事情』を閲読した。日本の数学教育と比較して目が留まった箇所があり、数学から数学教育に軸足を移し始めた筆者にとって強く印象に残った。

それは、扇形の面積を求める解の書き方の教育に関する日本とインドの違いについて、式を使って詳しく書いた部分だ。要約すると、日本は式と答えだけで〇がもらえるものの、インドではいちいち証明問題のようにロジックの流れを言葉で明記しながら解答を導き出さなければ点数をもらえない、ということである。

世界的に活躍する経営者を輩出するインド工科大学

数年後に筆者は、それを裏付ける書を手にした。すでにIT分野で世界的に注目され始めていたインド工科大学(IIT)の入試問題集(数学、物理、化学)、いわゆる“赤本”に相当するものである。

2000年の数学問題が、16題全問が証明問題であった(試験時間は2時間)。試験時間は年度によって違ったが、だいたい2時間か3時間だった。「証明」の次に驚いたことは、「出題範囲」である。日本の高校数学では扱わない同次形の微分方程式や、空間の変換を扱う3行3列の行列や、逆三角関数などの問題もいろいろ出題されていた。

参考までにIITは、初代インド首相となったネルー氏が、技術を基礎にした工業化と近代化が急務だと考え、1951年にアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)をモデルに第1校を開設した。現在ではインド国内に23校あって、総体としてIITと呼ばれており、グーグルを傘下に持つアルファベットのCEOをはじめ、世界的に活躍している経営者が卒業生に何人もいることで有名である。

受験生数が約80万人で合格者数が1.6万人という競争率50倍の試験では、解答用紙が膨大な枚数ゆえ、採点に関して不思議な気持ちを抱いていた。案の定、2007年からのIITの入試はマークシート式になり、納得した次第である。日本の大学入試センター試験のような「JEE Main」と、日本の大学の2次試験のような「JEE Advanced」の2段階であるが、どちらも出題範囲は同じと見える。

そのマークシート式の問題は実にユニークである。たとえば、選択肢が4つあって、1つだけが正解とは限らない。簡単な例で説明すると、「2/3」が正解の場合、4つの中に「正の数」と「整数でない」があれば、その2つを挙げないと×になる。さらに、間違った選択肢を挙げると、減点される。したがって、自信のない問題では、解答欄に何も書かないで0点になるほうがよいだろう。

これは、日本の試験で、「わからなければ、とりあえず3番目にマークしておくと統計的に有利」という日本固有の定説が通用しなくなるからである。これは日本でも参考になるのではないだろうか。

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