地球が46億年前に誕生した直後は強い酸性の大気に覆われていた可能性が高いとする研究成果を、愛媛大などのチームが発表した。当時の地球の状態を実験で再現した。酸性度が強いと、生命の起源となるアミノ酸ができにくいため、今回の結果はアミノ酸が宇宙からもたらされたとの説を補強するという。論文が5日、国際科学誌に掲載される。

 原始の地球は高温の「マグマの海」に覆われ、徐々に冷えて固まったと考えられている。

 チームは愛媛大の実験装置でマグマと同じ成分の岩石・カンラン岩を2300~2600度、15万~28万気圧の超高温・超高圧の環境にさらし、マグマの海に似た状態を再現。カンラン岩の中に含まれる鉄で化学反応が起き、酸素と結びつきやすい性質を持つ鉄が増えることを突き止めた。

 大気の成分はマグマから噴き出るガスの影響を受けるため、この鉄を含むマグマから二酸化炭素や二酸化硫黄などの酸性のガスが大量に放出されることで、大気の酸性度が強まったとみられるという。そのため、チームは地球誕生からしばらくは、たんぱく質の元になるアミノ酸ができにくい環境だったと結論づけた。

 アミノ酸の起源を巡っては、落雷で生成された有機物の中に含まれていたという説や、 隕石 によって宇宙からもたらされたとする説などがある。昨年6月には、日本の探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料からアミノ酸が見つかったと公表された。

 愛媛大の桑原秀治助教は「隕石にはアミノ酸だけではなく、酸性を弱める物質も含まれていたと考えられる。地球ができた後にそれらが降り注ぎ、約39億年前の生命の誕生につながったのだろう」と推測する。

  西真之・大阪大准教授(高圧地球科学)の話 「地球が形成された頃の大気に関する情報がほとんどない中、マグマの状態から解明しようとする意義深い実験だ。マグマと大気の成分がどこまで密接に関係し、大気がどう変化したのかなどの解明も期待される」

https://www.yomiuri.co.jp/science/20230505-OYT1T50080/