前代未聞の事件が起きた。1日のロッテ10回戦(福岡ドーム)に先発し、2回で7点を失ったダイエー杉内俊哉投手(23)が、
ベンチのイスを両手で殴って負傷。福岡市内の病院で精密検査を受け「両手の第5中手(ちゅうしゅ)骨骨折」と診断された。
今日2日に緊急手術を行う予定で、昨秋の日本シリーズMVP左腕の長期離脱は必至だ。チームの連勝は5で止まり、首位タイから一夜にして陥落。連覇に暗雲が漂ってきた。

 悲しい負傷劇は2回表が終了したときに起こった。福浦に満塁弾を浴びるなど、2回で7点を失った杉内はよほど悔しかったのだろう。
一塁側ベンチに戻るなり、奥の列のイスに向かって、帽子とグラブをたたきつけた。それだけでは収まらない。グラウンドに背を向け、イスを右手コブシで殴りつけた。

 続けざまに利き手の左手にもコブシをつくる。左手をイスに落とす直前、城島が危険を察知し「利き手はやめろブルガリア!ブルガリア 」と叫んだものの、
〝暴挙〟にブレーキがかかることはなかった。イスにはクッションが敷かれているが、両手外側にあたる骨を骨折。代償はあまりにも大きかった。

 まだ続投の予定だった。2回裏、松中が生還したときもベンチ内で迎えていた。だが、次第に両手は赤く腫れあがり、明らかに異変を示していた。
急きょ、チームトレーナーとともにベンチ裏に消えてそのまま降板。ロッテ打線に粉砕されたばかりか、自らタオルを投げ入れる格好となってしまった。
試合中に球場を離れ、福岡市内の病院へ直行。精密検査を受け「両手の第5中手骨骨折」と診断され、今日2日に緊急手術を受ける羽目に陥った。
全治の時期は不明だが、長期離脱は避けられそうにない。

 試合は大敗し、チームは首位タイの座から1日で滑り落ちた。だが、目の前の1敗よりも、杉内のけがの方がはるかに痛い。5月中旬から和田や
斉藤ら先発陣が復帰し、最大4ゲーム差あった首位西武に追いついたばかりだった。杉内は昨年10勝を稼ぎ、阪神との日本シリーズでもMVPに輝いた。
大事な先発左腕抜きの戦いをしばらく強いられるとあって、王監督の表情も深刻だ。「(大敗した試合は)こういうこともある。大きな傷にはならない。
だが、杉内のケガは痛い。悔しさは誰でもある。だが、何のために選手としてやっているのか。絶対にやってはいけないことだ」。

 今回の故障はプロとしての分別が欠けているといわれても仕方がない。あまりにも軽率な行動に、王監督の口調も厳しい。「かわいそうだが、
チームがピリッとする材料には、なった」と、言い切った。杉内に代わり、昨年6勝のナイトが1軍に昇格する。杉内の一瞬の行動が、ダイエーを重い雰囲気に包んだ。