脳は豆腐のように柔らかい組織であるため、ヘディングした回数が多いサッカー選手ほど認知機能が低下しやすいことなど、スポーツ中に発生するような比較的軽い衝撃でもダメージを受けかねないことが分かっています。ケンブリッジ大学の専門家らが行った新しい研究により、軽度の外傷性脳損傷(TBI)、つまり脳しんとうを経験した人の脳では「過結合(hyperconnectivity)」という現象が発生していることが確かめられました。

世界では年間推定5000万件のTBIが報告されており、高齢化による転倒事故の増加や低・中所得国における交通事故の増加を背景に、TBIの症例数は年々増加傾向にあります。これを受けて、科学者らはTBI患者への治療を改善することを目的としたプロジェクトである「CENTER-TBI」を立ち上げました。

このCENTER-TBIのデータを分析したケンブリッジ大学のレベッカ・ウッドロウ氏らの研究チームは、2023年2月に神経学の学術誌・Brainに掲載された論文で、「6カ月以内の完全回復が見込まれる軽度のTBIであっても、6カ月以降も問題が続く事例が多いことが判明した」と発表しました。研究結果によると、ほぼ半数に当たる45%で脳の損傷に起因する症状が出ており、TBI患者らは疲労や集中力の低下、頭痛などに悩まされているとのこと。

ウッドロウ氏は科学系ニュースサイトのLive Scienceに、「私たちは、転帰が悪いTBI患者がいかに多いかに驚かされました。ほぼ半分の人で影響が見られました」と話しています。

https://gigazine.net/news/20230510-concussions-rewire-brain/