東海道新幹線に乗って西に向かうとき、新大阪駅までに1都2府5県を通る。

「のぞみ」が停まる東京・神奈川・愛知・京都・大阪あたりは言うまでもない。静岡県もなかなか長いし富士山があるから、その存在を忘れることはなかろう。滋賀県は、ちょっと地味ではあるけれど、まあ琵琶湖だ。

滋賀県内まで来ると、もうすぐ京都だなあなどと思う。そしてもうひとつ……はなんでしたっけ。

……などといっていると怒られるので早々に答えをいうと、岐阜県である。ただ、忘れてしまうのもムリはなく、東海道新幹線は岐阜県をちょっとかすめて通るだけで、途中には岐阜羽島という駅がひとつあるだけだ(滋賀県も米原駅だけなんですけどね)。

この岐阜羽島駅、接続している他の路線は名鉄羽島線で、どちらかというとローカル色が濃い。もちろん岐阜羽島駅に「のぞみ」は停まらないわけで、岐阜県を通っているなあ……などと実感するのは難しいのである。ゴメンナサイ。

さらにいうと、岐阜羽島駅は県都の岐阜市内からはだいぶ離れている。つまり、岐阜県の立場で見れば、県庁所在地が素通りされてしまっているのだ。

それもこれも、名古屋から関ケ原・米原方面までできるだけ直線的に結ぶことを考えると、岐阜市内経由はだいぶ遠回り。だから仕方がないのだが、新幹線が通っていて県内に駅もあるのに県庁所在地を素通りするというケースは多くない。他には滋賀県大津市・群馬県前橋市・佐賀県佐賀市があるだけだ。つまり、岐阜の人たちはなかなか新幹線運に恵まれていないというわけだ。

が、もちろんそんな県都・岐阜とても、何もないわけではない。

だいいち、名古屋駅から在来線の快速・新快速にでも乗ればたったのふた駅、20分で着く。東京駅から新宿駅くらいなものだ。別にムリして新幹線を通す必要もないくらいに近い。

逆にその近さのおかげで、岐阜という町が名古屋の衛星都市のように思われている向きもあるが、それはそれ。大都市・名古屋に近いのは悪いことではない。

それに何より、岐阜にはあの人がいる。そう、みんな大好き天下の織田信長公である。というわけで、あれこれ理由をつけて織田信長公に会いに、岐阜駅にやってきた。

件の通り、名古屋駅から新快速でわずか20分。途中に停まるのは尾張一宮駅だけだから、ほとんど隣町といっていい。

さすが県都というべき立派な駅ビルを持つ高架の駅で、東海道本線に加えて飛騨高山に向かう高山本線が乗り入れている駅だ。駅ビルの中にはちゃんとドトールコーヒーも入っている。

そして駅ビルから駅前広場に出ると……いました、いましたよ。黄金に輝く信長公。比喩でもなんでもなく、本当の意味で黄金に輝く信長公が、岐阜駅前広場のいちばん目立つところにそびえ立って出迎えてくれました。

織田信長と岐阜の関係はあまりに深い。戦国時代、岐阜の町は井ノ口といい、斎藤氏が治めていた。斎藤道三が長良川に面する稲葉山(現在は金華山)に城を築き、麓に城下町を整備したのが町の歴史のはじまりだ。

1567年に尾張の織田信長が美濃に侵攻して斎藤氏を滅ぼし、稲葉山城に入城。このときに町の名を岐阜と改めて、ここを本拠地としていよいよ本格的に天下取りへと乗り出していった。尾張の商人たちも岐阜城下に移され、城下町には楽市楽座を実施して商業都市としても繁栄していったという。

つまりは簡単にまとめると、岐阜と名付けて今に続く町の形を整備したのが織田信長公というわけだ。もっとおおざっぱに言えば、岐阜の町の生みの親。そりゃあもう、駅前に黄金の信長公が立っているのもうなずけるし、キムタクさんが信長公に扮してパレードをするのもとうぜんのなりゆきなのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d468b4cc9c7103402d49f0e49aab68707edd2122