東京・市ヶ谷にある防衛省内、航空幕僚監部勤務の1佐は安保法制に揺れる隊内の“空気”についてこう話す。
1佐によると、防衛省・自衛隊内部では大きく分けて3つの捉え方があるという。

 ひとつは「無関心派」。他国の戦争への参加も、東日本大震災のサイパ(災害派遣)と同じく“仕事”として淡々とこなすという考え方だ。
自衛官の半分近くがこれに属し、自身もそうだと1佐は言う。

 残り4割が、いざ有事の際には退職も辞さない「やる気なし派」、そして残り1割が戦場に率先して行きたがる好戦的な「イケイケ派」というのが1佐の見立てだ。

「そもそも自衛隊に入隊して長く勤める者は『体育会系・単細胞・負けず嫌い』という気質。
上は防衛大学校卒の幹部から、下は高卒の兵隊までそう。難しい話は好まない。命令が出ればそれを実行する。その背景は関係ない」

 とはいえ戦地に赴くとなると自衛官といえども人間だ。やはり思うところがあるのではないか。

「正直、他国の戦争に行けといわれて、『ハイ! 喜んで』とは言い難い。ただ私は18歳で防大に入学したときから“いざ有事”を決意している。
でも、ほかの公務員と同じく安定した職と考えている隊員にとっては難しい選択になるのは確かだ」

 では「難しい選択」を迫られる隊員はどうか。高校卒業後、数ある公務員試験に落ち、
やっと陸上自衛隊に一般隊員として合格し、入隊したという3曹(34歳)は、他国の戦争への参加命令を「きっぱり拒む」と話す。

「自衛隊が戦争に行く? いいんじゃない? 俺が行かなければそれでいい。俺の周りにはそんなに張り切ってるヤツはいない。
自衛官は勤務がキツくてもラクでも、同じ給料だぜ。だったらラクなほうを選ぶだろ」(第3師団・3曹)

 自衛隊員は幹部(将校)、曹士(下士官兵)を問わず、皆、何がしかの専門職種を持つことを義務付けられている。
陸自なら「普・機・特」と呼ばれる歩兵、戦車、大砲といった戦闘系のほか、会計、需品といった後方系の職種もある。
先の3曹は職種選びの際、「有事の際、戦場に行かなくてもよい」「ラク」「退職後、民間企業でも通用するスキルが身につく仕事」を基準に後方系職種を選んだと明かす。

 この3曹と同じ隊に勤務する女性隊員(2曹・28歳)も同調する。

「子供がまだ小さいうちに、『戦地へ行け』は非常識。ありえませんよ。もしそんな命令が来たら子供を盾に拒みます!」

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