あまりに劣悪、時代遅れ…政府の「自己責任」を強いる姿勢が生み出す「深刻な避難生活の構造」
https://news.yahoo.co.jp/articles/246a447bcca8f4ffd767f9f52442f39488bd614d


自然災害大国ニッポンの避難生活はなぜいまだに「体育館」なのか? 

前編「自然災害大国ニッポンの避難が『体育館生活』であることの強烈な違和感、そして海外との『決定的な差』」につづき、問題の構造を掘り下げる。
「援助を受ける権利」と「援助をする義務」を明確に
国際赤十字「人道憲章と人道対応に関する最低基準」(スフィア基準)

 なぜ日本の避難所は劣悪な環境なのか。そこには、災害対策や復興支援についての日本と諸外国との考え方の違いが表れている。

 実は、国際赤十字などによる基準(スフィア基準)は、単なる避難所施設の建築基準ではない。正式な名称は「人道憲章と人道対応に関する最低基準」であり、避難者はどう扱われるべきであるかを個人の尊厳と人権保障の観点から示したものである。

 日本語版で360ページ超の冊子は、冒頭に「人道憲章」を掲げており、次のように宣言している。

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*災害や紛争の避難者には尊厳ある生活を営む権利があり、援助を受ける権利がある。
*避難者への支援については、第一にその国の国家に役割と責任がある。
(国際赤十字・スフィア基準「人道憲章」より)
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 つまり、避難者は援助の対象者(客体)ではなく、援助を受ける権利者(主体)として扱われるべきであり、その尊厳が保障されなければならない。これは避難者支援の根本原則とされており、人道憲章に続く個別の基準にも貫かれている。

 たとえば、避難所の運営や援助の方法については、可能な限り避難者が決定プロセスに参加し、情報を知らされることが重要とされる。避難者の自己決定権が尊重され、その意向が反映されてこそ有益な支援が実現できるからである。

 日本では、この視点が避難所運営に欠けていたために、供給する側と受け取る側とにギャップが生じた例が数多い。たとえば、衛生状態の悪い中古の下着が善意で寄付されたり、生理用品を求める声が行政に届かない事態も過去に起きた。自己決定権を尊重して意向聴取を重視すれば、こうした問題は解決しやすくなる。