脳トレの根拠となった研究では、単純な計算、あるいは漢字の演習や音読などを繰り返すと、特に高次機能に関わるとされている前頭葉の血流が広い範囲で増大するという結果が得られた。

その結果から研究者は、脳トレが脳を鍛えて衰えを防ぐ、あるいは脳の機能を向上させると結論づけ、実際に認知症が改善した患者さんの例も紹介した。そして、脳トレ用のコンピュータゲーム機は全世界で3000万個以上売れ、シリーズで発売されているドリル類も、国内で合計数百万冊のベストセラーとなり、それは現在も続いている。

しかし、海外で実施された大規模調査の結果、高齢者が脳トレを繰り返しても、認知機能や記憶機能が改善するという事実は確認されず、認知症の予防効果もなかった。脳トレをすると前頭葉の血流量が増えるというデータはまちがいない事実であることから、脳の血流量の増大、つまりニューロン集団の活動量の増大は、必ずしも機能の向上にはつながらないということがわかる。

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