総務省が2021年11月から開催している「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」での議論を踏まえ、検討会が目指している、近い将来に訪れる可能性の高い民放の姿を示す。


日本には現在、公共放送であるNHKを除き、在京キー5局を筆頭に系列化されている114の地上波系列局と、13の独立UHF局を合わせて、計127の地上波テレビ局(社)がある(他に衛星放送局などもある)。
例えば日本テレビ放送網は「NNN」というネットワークで30社、フジテレビジョンは「FNN」で28社、テレビ東京は「TXN」で5社を、それぞれ系列として束ねている。
在京キー5局と在阪準キー5局以外の地上波系列局は、ローカル局といわれている。一言で言ってしまえば検討会は、全国に散らばる地上波テレビ局、中でもローカル局について、大規模な再編をしやすいように制度を変えていこうとしているのだ。

“分配金”頼みの傾向が強いローカル局

これまでは、全国津々浦々までテレビ放送を届けるため、在京キー局が各都道府県のローカル局を系列化して、ローカル局の電波を使って、地方の視聴者にキー局発の放送を届けてきた。
キー局が広告主から獲得する広告収入には、ローカル局を通じて視聴する視聴者の分が含まれる。キー局にとってローカル局は必要不可欠なパートナーであり、
ローカル局が抱える視聴者数などに応じて「ネットワーク費」「電波料」などの名目で、広告収入の一定割合をローカル局に分配してきた。

この独特の仕組みのため、多くのローカル局の経営は、売上高の3分の1から4分の1ほどを占めるこの“分配金”に頼る構図になりがちだった。
放送するためのインフラ設備を整えてしまえば、後はキー局制作の番組を流すだけで“分配金”を得られる。それなりの費用を投じて自主制作番組をつくって放送し、
主に地元の広告主を自ら開拓するよりも、キー局制作の番組をそのまま放送して “分配金”を受け取るほうが、多くのローカル局にとって高収益だったのだ。
おかげで、自主制作比率が10%前後にとどまっているローカル局は珍しくない。

ローカル局の存在意義が問われる

ここ数年で、この状況は大きく変化した。民放は22年4月から、19〜23時ごろに放映する番組について、テレビ放送と同時に、TVer(ティーバー、東京・港)が運営する無料動画配信サービス「TVer」を使ってリアルタイム配信を開始。
月間ユーザー数(MUB、月間ユニークブラウザー数)が23年1月に2700万を突破するなど、TVerのユーザー数は順調に伸びている。

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