重大少年事件記録廃棄 「国民の財産失わせた」最高裁謝罪

 重大少年事件の記録が各地の裁判所で廃棄されていた問題で、最高裁は25日、調査報告書を公表し「後世に引き継ぐべき記録(国民の財産)を多数失わせ、国民の皆様におわび申し上げる」と謝罪した。保存記録を膨大化させないよう全国の裁判所にメッセージを送った最高裁の対応が、保存に対する職員の消極的な姿勢を強めたと認めた。

 事件記録の廃棄を巡っては2022年10月に神戸連続児童殺傷事件(1997年)の記録が神戸家裁で廃棄されていたことが発覚。最高裁は有識者委員会を設置した。報道機関から保存の有無について問い合わせがあった少年事件52件や、重要な憲法問題を扱った民事事件35件を対象に、当時の職員らにヒアリングして共通する問題点を分析し、報告書をまとめた。

 最高裁の内規と通達では少年事件の記録は少年が26歳になるまで保存すると定め、社会の耳目を集めた事件や、史料的価値が高い事件は永久に保存する「特別保存」を義務付ける。

 しかし報告書によると、調査の結果、少年事件52件の大半が、特別保存にするか裁判所内部で検討されないまま廃棄されていた。神戸連続児童殺傷事件をはじめ、4件は特別保存にするかどうかを検討されたものの、重要性が家裁内で適切に共有されず廃棄されていたという。

 原因について報告書は、最高裁が91年に「特別保存記録の膨大化の防止策」をまとめた書面を全国の地家裁所長らに出していたことを問題視。「最高裁の不適切な対応で、記録は原則として廃棄すべきだとの認識を強めることになった。特別保存は『例外中の例外』とする運用が形作られた」と結論付けた。

 再発防止策として、常設の第三者委員会を設置して特別保存の適否について意見を求めていくことを挙げ、「歴史的、社会的な意義を有する記録を後世に確実に引き継いでいくため態勢を整備する」とした。
https://mainichi.jp/articles/20230525/k00/00m/040/156000c