訪日外国人(インバウンド)が大幅に回復している。日本政府観光局(JNTO)によると4月の訪日外客は194万9100人で、3月に続きコロナ前の70%弱の水準となった。インバウンドの回復が順調に進む中、旅行業関係者が気をもむのは日本人海外旅行者の回復の鈍さだ。夏休みに向けた需要喚起がカギとなる。(梶原洵子)

 「国際交流は、インバウンドとアウトバウンド(日本人の国外旅行)の双方あってこそのものだ。今、このバランスが崩れており、早急にアウトバウンドを回復させる必要がある」。日本旅行業協会(JATA)の高橋広行会長(JTB会長)は、観光庁との共同会見でこう訴えた。海外旅行者の回復状況は、欧米だけでなく、厳しい制限が長く続いた韓国に比べてもペースが遅いという。

 コロナ前の70%近くまで回復した訪日外客数に対し、出国日本人数はコロナ前の30%台にとどまっている。このアンバランスさが長期化すると、日本の旅行会社が海外ホテルを予約する仕入れ力が弱まるなど、「海外での日本人マーケットが縮小し、良質なサービスを提供できなくなる危機感がある」(高橋会長)という。

 台湾観光協会はいち早くJATAとの間で、訪台日本人観光客の早期回復を図るための覚書を結んだ。台湾では、グリーン観光や体験型観光などの旅行企画や訪台旅行者へのプレゼント企画などが充実。また、デジタル技術により混雑を避けて旅程を組める情報サービスを用意するなど、ポストコロナの旅行ニーズへの対応に注力している。

 台湾から日本への旅行者はすでに回復してきており、台湾観光協会の葉菊蘭会長は「(台日の旅行者数の)アンバランスは“不健康”だ。海外旅行の再開時の行き先にぜひ台湾を選んでほしい」と話す。

 訪日外客数が大幅に回復したのは、2022年10月に入国者数の上限撤廃や個人の外国人旅行客の入国解禁などの水際対策が大幅に緩和されてからだ。旅行者の回復には時差があり、約2カ月後の同12月にコロナ前の54・2%へ回復した。出国日本人数も次の夏休みが試金石で、最終的には年末年始にどこまで回復するか注目される。

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