https://www.yomiuri.co.jp/world/20230303-OYT1T50100/


――日本の一般市民から見ると、「そもそもロシアがなぜ、ウクライナに侵略したのか」という基本的な疑問がある。

「ロシアをウクライナ侵略へと突き動かした原動力の一つに、『文化』がある。『文化』と言っても、ロシア国内の極右、愛国的なイデオロギーだ。
戦争を起こす理由には政治、軍事、資源などがあるが、今回の戦争の根底にはイデオロギーが色濃くある。
つまり、『文化』が後押しした形態の戦争と言える。

ロシアのウルトラ・ナショナリスト、極右思想家のアレクサンドル・ドゥギンという人物が提唱しているイデオロギー『ユーラシア主義(ネオ・ユーラシア主義)』に、
プーチン大統領は大きな影響を受けたと言われている。ドゥギン氏はプーチン氏を強力に支持しており、プーチン氏の“頭脳”とも、“右腕”とも呼ばれている。

 この『ユーラシア主義』は『ロシア世界』とも密接に関係しているのだが、
これは『ロシア語を話し、ロシア正教を信じる人々が住んでいるところはすべてロシア』という極端な拡大主義だ。
この考えに基づけば、『(ロシア語話者がいる)ウクライナも当然、ロシアになるべきだ』ということになる。

 プーチン氏は侵略開始時の演説で、大義名分として、『ウクライナ東部ドンバス地方で虐待されているロシア語話者を助けるため』と語っており、
これはまさに『ロシア世界』の考えに直結している」


――歴史的な側面は?

「ロシアという国のスタートは、9世紀頃にできたキエフ大公国にさかのぼる。
自分たちの国・ロシア誕生の地が、『外国』のウクライナにあるというのは、極右愛国主義の人々には許せないことなのだろう。

また、ソ連崩壊時には、ソ連に所属していた14の共和国が独立し、ロシアが小さくなってしまった経緯がある。
プーチン氏にはウクライナを併合することで、『大きなロシア』を復活させたいという帝国主義的な野望もあると思う」