広島市であった先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、バイデン米大統領の随行者が核攻撃を指令する通信機器などが入った「核のフットボール」とみられるかばんを平和記念公園(中区)に持ち込んだことを巡って、被爆者たちから批判の声が続いている。米国はなぜ、原爆犠牲者の慰霊碑がある公園内にまで「核ボタン」を持ち込んだのか。専門家の見解を基に検証した。

【写真】バイデン米大統領の随行者が持ち運ぶ黒いかばん。「核のフットボール」とみられる(計3枚)
被爆者から批判の声噴出

 かばんが持ち込まれたのはサミット初日の19日。バイデン大統領が原爆資料館に到着後、随行者が黒いかばんを持ち資料館にも入った。被爆者たちから「論外」「核兵器を使用した過去に向き合っていない」などの批判が噴出した。

 米国人で核問題に詳しい、広島市立大広島平和研究所のロバート・ジェイコブズ教授は「随行者が右手に持つのが核のフットボール」と指摘。「平和公園に持ち込まれたことは、原爆犠牲者の遺族の心情を傷つけるだろう。一方、核軍縮に積極的とされるバイデン大統領でも常に核ボタンを側に置かなければならない。それが米国の核のシステム」と解説する。

 背景にあるのが「警戒即時発射」態勢だという。核保有9カ国のうち米国とロシアは、核弾頭ミサイルを敵のミサイル基地などへ短時間で発射できる警戒態勢をとる。詳細は明らかになっていないが、国連軍縮研究所(UNIDIR)は2012年、米国は約920発、ロシアは約890発がこの態勢下にあるとした。

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