健康保険証とマイナンバーカードを一体化した「マイナ保険証」。別人の情報が表示されたり、不具合で全額払いを余儀なくされるトラブルが報告されているが、そもそもマイナ保険証を使ったオンライン資格確認にも疑問が。事実上、NTTの光ファイバー通信の独占状態な一方、導入が難航するケースも少なくなく、医療機関側の不満も強いからだ。拙速なマイナ保険証化への反対世論も強まる中、政府がかたくなに推進する背景に、利権のにおいはないのか。(山田祐一郎、岸本拓也)

◆「NTT光回線以外の選択肢がなかった」
 マイナンバーカードと一体化された健康保険証のオンライン資格確認が今年4月に義務化された。その「オンライン」部分たる回線はほぼ、NTT光回線の一択となっている。だがそれが、医療機関の現場で困惑を広げている。
 「もともとは光回線を入れられない建物だったが、何とか工事してもらった」。東京都江戸川区で歯科医院を開く扇山隆さん(57)は昨年12月のシステム導入時の苦労をこう語る。もともと医院では、電話線を使用した「ISDN」を利用。2024年1月にISDNはサービスが終了するが、建物との位置関係などの理由で以前から業者に「光回線を引くのは難しい」と言われていたという。
 「オンライン資格確認の義務化では当初は光回線以外を考えた」というが、「システム業者から『オンライン資格確認は原則、NTT光回線でないと』と言われ、それ以外の選択肢がなかった」と振り返る。国は導入に際し補助金を出しているが、全部はまかなえず、自己負担分が出た。