4年間髪伸ばした町職員 「男のくせに」…偏見も信念貫いたヘアドネーション がん治療の末、亡くした父ら思い(神戸新聞NEXT)
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病気などで髪の毛を失った人に医療用ウィッグ(かつら)を提供する「ヘアドネーション」に貢献しようと、兵庫県佐用町職員の大谷将之さん(49)=同町=が4年間伸ばした髪を切り、仙台市のNPO法人に約40センチの髪を6束送った。髪を伸ばす間は「男のくせに」「だらしない」と言われたこともあったが、やり遂げた大谷さんは達成感をにじませた。(真鍋 愛)

短い髪形だった大谷さんは、行きつけの理髪店でヘアドネーションを知り、「少しの我慢と手入れで男性でも役に立てるなら」と挑戦を始めた。手入れを欠かさず、就寝時は寝返りの摩擦で髪を傷めないよう心がけた。シャンプーなどは、東京に住む長女から美容室専用品を送ってもらった。

髪が肩にかかる長さになると、事情を知らない人から「みっともない」「柄が悪い」などと言われることが増えた。職場は窓口対応のある部署ではないが、町職員という立場から苦言を呈する同僚もいた。夏の暑さや手入れの大変さに、嫌気が差したことも。それでも諦めなかったのは、抗がん剤治療の末に亡くなった、父親と知人女性の影響が大きかったからだ。

約15年前、悪性リンパ腫を患った父親は、治療の副作用で髪が抜けた。見舞いに行くと笑顔を見せたが、常にニットの帽子をかぶり、頭を隠していた。急性白血病になった知人女性も、帽子を手放さなかった。「病床の人もおしゃれがしたいはず。自分が髪を送れば、精神的に助かるかも」。そう信じて伸ばし続けた。

5月11日、大谷さんは同町三日月の美容室「ROOS(ルース)」を訪れ、自ら髪にはさみを入れた。店長の内野絵理奈さん(39)は「長い髪のケアは女性でも大変だが、慣れない男性はなおさらだったと思う」とねぎらった。

大谷さんは「ヘアドネーションを知らない人はまだまだ多い。少しでも取り組みが広がってほしい」と願った。