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髪がコンクリ化して、ノコギリで切るしかない…看護師が閉鎖病棟で見た「統合失調症の陰性症状」の実態

統合失調症とはどのような病気なのだろうか。看護師の西島暁子さんは「私が勤務した精神科病棟では、活動性が低下する『陰性症状』のために、約10年間一度も入浴していない方がいた。髪の毛が皮脂でコンクリートのように固まり、ハサミでは散髪ができないほどだった」という
■統合失調症には陽性症状と陰性症状がある

 統合失調症とは、脳のさまざまな働きをまとめられなくなり、考えや気持ちがまとまらない精神状態が続く病気です。

 幻覚や妄想などが起こり、本当は言われていないのに悪口を言われたと思い込んだり独り言が増えたりします。

 統合失調症には陽性症状と陰性症状があります。

 陽性症状は幻覚が見えたり幻聴が聞こえたり、ありもしない妄想を信じ込んだりなど、現実にはあるはずがないものが現れる状態です。

 現実にはなにも起きていないのにいじめを受けたと思い込んだり、誰かに監視されていると思い込んだりする人もいます。

 妄想や幻覚は非常にはっきりと見えたり聞こえたりすることもあるので、病気のせいだと気づくことが難しくなります。

■24時間ひたすらベッドに横になっている

 これに対して陰性症状は、活動性が低下して感情が現れなくなったり、意欲が低下したりする状態です。

 身なりにまったく構わなくなったり入浴しなくなったりするほか、引きこもり状態になるなど、健康なときにはできていたことが失われていきます。

 閉鎖病棟には統合失調症の患者も多く入院していました。

 統合失調症でも慢性期で陰性症状が強い人だと、さまざまな意欲が低下して自宅では生活が成り立たなくなって入院が必要になることがあります。

 こうした患者の場合、24時間ひたすらベッドに横になっているだけで、ひどい場合は褥瘡(じょくそう)ができるまで身動き一つしないこともあります。
しにする患者さんをケアし続けることは簡単ではありません。

 特に最初の頃は強い恐怖を感じたり、自分自身もひどく気持ちが落ち込んで帰ったりする日もありました。

 夜寝るときに、翌朝出勤するのが恐ろしく感じることもありました。

 翌日が保護室担当の日であったりすれば、それだけで気が重くて仕方なく、朝身支度するのも憂鬱でした。

 しかしそれでも私が精神科の看護師を辞めなかったのは、入院治療によって患者さんが平常に戻り、安定して退院していく様子を何度も目の当たりにしたからです。

 入院時に暴れたり看護師に罵声を浴びせたり、とてもあり得ない妄想を口走っている人が、薬物療法や電気療法、作業療法などさまざまな治療を受けて、退院時には別人のように穏やかになる様子を何人も見てきました。

 入院したときは保護室で叫んでいて、今にも看護師に殴りかからんばかりに暴れていた人が、家族とともにありがとうと感謝の言葉とともに退院していくのです。