「生物は不変なものではなく、長い時間をかけて少しずつ進化してきた」という進化論は多くの研究や証拠と共に定説として受け入れられ、
今では教科書にも記載されていますが、宗教や思想によっては進化論を受け入れない地域も存在します。
インドでは、中学・高校のカリキュラムから進化論が削除されると報じられており、さらに元素周期表や公害・気候変動などのトピックも取り扱われなくなるとのことです。

学術雑誌のScienceによると、インドの9年生(日本の中学3年生)と10年生(日本の高校1年生)が使う教科書から、チャールズ・ダーウィンの唱えた進化論に関する項目が削除されることが決定しているとのこと。

さらに、元素周期表に関するトピックや、エネルギー源と天然資源の管理についてのトピック、さらに電磁気学の父ともいえるマイケル・ファラデーの功績や産業革命に関する内容、民主主義と多様性に関するトピックも教科書から削除されました。
これらの変更について、NCERTは「他の場所で扱われている同様の内容と重複していないか、内容の難易度はどうか、内容が無関係かどうかを考慮した」と述べています。

インドの教育者や科学者の間で特に懸念されているのが、進化論が削除されたということ。進化論は生物の多様性に深く関わるトピックであり、さらにはもっと上の学年で習う遺伝にも関連します。
ジャワハルラール・ネルー先端科学研究センターの進化生物学者であるアミターブ・ジョシ氏は、「インドの宗教団体が反進化論の立場を取り始めており、その影響がカリキュラムに現れています」と指摘しています。

ジャワハルラール・ネルー大学の歴史学者であるアディティヤ・ムケルジー氏によると、今回のカリキュラムの変更は、インドの与党であるインド人民党と密接な関係をもつ
極右ヒンドゥー教組織・民族義勇団によって推進されているとのこと。RSSはヒンドゥー教がインドのほかの宗教や文化から脅かされていると考えているそうで、ヒンドゥー教の教えと相性が悪い進化論を削除するように圧力がかかったのではないかとムケルジー氏は推測しています。

なお、インドの科学者や教師など4500人以上がカリキュラムを元に戻す訴えに署名していますが、NCERTは一切応えておらず、科学雑誌・Natureのコメント要請にも応じていません

https://gigazine.net/news/20230601-india-cuts-evolution-periodic-table/