「こちらは泣く泣く引き下がるしかなかったんです。岸田さんからは謝罪の言葉ひとつありません」

 と、半ばあきれながら語るのは、岸田総理の地元である広島県広島市のとある寺の住職だ。この寺は、岸田総理の私邸のすぐ近くに位置しているが、一体なぜ、ご近所さんである住職はこう嘆くに至ったのか。その背景には、50年以上にわたり、岸田家から何ら解決策が提示されずに放置され続けてきた土地トラブルが存在するのだった。

 広島市街を見下ろす小高い丘で、桜の名所として知られる「比治山公園」の一角に岸田総理の私邸はある。1階部分だけで300平方メートルを超える豪邸だが、その土地はもともと総理の祖父で元衆議院議員の岸田正記氏(故人)が1919年に購入したものだった。

 正記氏は政界引退後の1960年、同地に建てた自宅を改造して「比治山遊園」という宿泊施設付きの「健康センター」を開業する。土地トラブルはこの時から始まった。

 先の住職が言う。

「比治山遊園を造るときに正記さんが勝手に山を切り崩して、ウチの寺との境界線の土地をならしてしまったんです。後から公図を見比べると、遊園が一部ウチの土地を使っていたことが分かりました。向こうは地元の有力者。こちらは当時、女手ひとつで寺を切り盛りしていて、強く出られなかったと聞いています」

(中略)

 岸田総理の父、文武氏とも直接話したことがあったというが……

「とられてしまった土地に生える楠を指して“ワシが子どもの頃に登った木だから、この楠が生えている場所はウチのもんなんじゃ!”と文武さんは主張してきました。政治家だからですかね、あまりに強引な話でした」(同)

 90年には、文武氏が、五徳屋が持つ寺近くの土地に自宅を建設。それが現在の岸田総理の私邸である。その後、五徳屋は10年に解散し、廃業。一帯の土地や比治山遊園だった建物は同年にまとめて五徳屋からツネイシホールディングスに売却されたため、総理の私邸は同ホールディングスが持つ土地の上に立っている格好だ。要は借地である。

https://www.dailyshincho.jp/article/2023/06071232/?all=1