タワマン上層階の子「成績は低迷」の理由
家庭教師が気づいた、住まいの弱点
https://president.jp/articles/-/26118

外に出るのを面倒くさがる、温室育ち
Aくんの家で指導をしていると、とても疲れる。Aくんに算数の問題を教えてもなかなか理解してくれないからというのもあるが、一番の理由はエアコンによる人工的な室温が身体にダメージを与えるからだ。Aくんがたった1時間の授業に集中できないのも、この部屋の温度が一定で、刺激がないからだと推測している。

人間は変化のない空間にずっといると、身体感覚が育たない。暑かったり寒かったりといった肌感覚がなく、足裏の感覚も常に一定だと、身体に刺激が少なく、身体感覚が鈍る。そして、いろいろなことに興味を示さなくなる。

タワーマンションの最上階に暮らすAくんは、外に出ることを面倒くさがる。いつも快適な温度の部屋で過ごしているから、「晴れているから外で遊ぼう」「涼しくなったから散歩に行こう」という気持ちにならないのだ。外に出ようと思っても、エレベーターの待ち時間があったり、エレベーターホールから玄関まで距離があったりで、時間がかかる。このアクセスの悪さも面倒くさがる原因になる。

外に出るのが面倒な子は、世界が広がらない。小学生の学習には、イメージが不可欠だからだ。子供は自分が体験したことや見たものでないとイメージできない。イメージができないと頭の中に知識が入りにくいし、そもそも問題を理解できないこともある。だから、実体験の乏しい子は、成績が伸びにくい。

タワーマンションの上層階で暮らしていると、風や雨の音、太陽の光が感じられないため、四季を感じにくい。国語には情景をイメージし、それを人の心に喩えることがある。でも、四季が感じられない子には、それを人の心に喩えるなんてことは到底できない。「初夏のような清々しい気持ち」と書かれていても、初夏がどんな景色でどんな匂いがするのかイメージすることができない。

季節を感じられない子は、旬の食べ物にも関心を持たない。旬の食べ物というと、有名校では慶應中等部でよく出題されるテーマだが、土いじりをしたことがないCちゃん(小2)は、理科の植物分野全般が苦手だ。じゃがいもが土の中で育つこと、きゅうりにはつるがあることを知らなかった。実際に見たことがないから興味すら沸かない。そこで、私はCちゃんプランターでゴーヤを育ててみることをすすめた。はじめは母親に水やりを任せっぱなしだったか、育っていく様子を見るうちに、少しずつ自分で世話をするようになった。それから植物への興味も見せるようになった。