ホテルや高級レストランの晩餐会のようなメニューでは、フランス語で綴ってあったりするのですが、カタカナで書かれたメニューなんかは、ほとんど英語読みのカタカナ書きです。

 牛肉は「ビーフ」、鶏肉は「チキン」。フランス語なら、仔牛は「ヴォー」、成牛なら「ブッフ」、鶏なら「ヴォライユ」とか「プーレ」と言うはずですが、ほとんどそうしたものは見ません。

 洋食では定番の、「ビーフシチュー」や「ローストビーフ」といった呼び方も、英語です。
 そもそも「シチュー」という名前の料理はイギリス料理で、もともとフランスになく、むしろイギリスから逆輸入されて、「アイリッシュ・シチュー」というフランス料理が生まれたくらいです。「ロースト」は、フランス語なら「ロティ」です。

(中略)

●洋食の中のイギリス料理

 カレーなども、明らかにイギリスの影響です。
 当時、イギリスがインドを支配していたので、インドのスパイスがイギリスにもたらされ、世界ではじめてカレー粉を作ったのはイギリスのC&B社です。日本のS&Bは、このC&Bの真似をしたわけです。
 そのカレー粉を使ってシチューにしたイギリス料理が、日本のカレーの原点です。

 今でも洋食の定番といえば、ビーフシチューやステーキ、カレー、エビフライ、カツレツ、コロッケなどが頭に浮かぶと思いますが、これらのことはまさに、イギリスの影響の結果と言えるでしょう。

 「ステーキ」という料理の発祥はスコットランドなので、イギリス人と、イギリス系の移民が多いアメリカ人好みの料理です。

 フランス人も、牛をよく食べますが、牛を食べるなら「仔牛」を好み、シンプルに焼く場合はむしろ羊や鴨のほうが好きで、それもステーキのような「グリル」ではなく、「ロースト」(ロティ)が好きです。

 フランス料理では、油で揚げる料理はマイナーなので、エビフライやカツレツは、天ぷらの応用として日本で発明されたとよく言われます。

 しかし、イギリスは「揚げ物」が大好きな国だったので、実はその影響があったのではないかと思います。
 フィッシュ&チップスなどは、現代でもイギリス料理の定番だし、じゃがいものコロッケは、イギリスの十九世紀の料理本にも出てきます。

 つまり、イギリス人が多用する揚げ物の調理法が、天ぷらに慣れ親しんでいる日本人にとっては馴染みやすく、大量調理にも適していたので、日本の洋食として多用・定着したのではないかと思います。

http://seiyouryouri.yokohama/alacart/uk.html