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巨大スパインに基づく統合失調症の病態生理の新仮説 -神経細胞の“シナプス民主主義”の崩壊-
https://research-er.jp/articles/view/122928
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チームの小尾(永田)紀翔 客員研究員、林(高木)朗子 チームリーダーらの国際共同研究グループは、ごく少数の非常に強いシナプス[1](巨大スパイン[2])が統合失調症[3]の責任病態生理である可能性を発見しました。

本研究成果は、統合失調症をはじめとする精神疾患の病態生理解明や、新たな治療戦略の開発に寄与すると期待できます。

これまで、統合失調症の病態生理には大脳皮質の興奮性シナプス[1]が関与するとされていましたが、具体的な関係は明らかになっていませんでした。

今回、国際共同研究グループは統合失調症モデルマウスを作製し、グルタミン酸シナプス伝達を調べました。その結果、モデルマウスには巨大スパインが多く生成され、この巨大スパインを介したシナプス入力[1]が神経発火[4]を亢進すること、巨大スパインの生成を抑制すると作業記憶の低下が予防できること見いだしました。

さらに、ヒトの統合失調症患者由来の死後脳においても、巨大スパインが健常人よりも有意に多いことが見いだされました。一つの神経細胞には約1万個ものシナプスがあり、神経発火には多くのシナプスが同時期に協調的に入力することが重要とされ、この仕組みを"シナプス民主主義"と呼ぶ研究者もいます。

しかし統合失調症の一部では、少数の巨大スパインを介した非常に強いシナプス入力だけで神経発火が決定付けられている可能性があります。