人間ドックで異常な数値が…安倍元首相が「潰瘍性大腸炎」闘病中に吐露していた“気弱な心境”
https://news.yahoo.co.jp/articles/58668affdd52b500d761ed2cf5567cc4a2b80052

退陣表明の3週間近く前、私は8月10日の電話で病状について安倍から初めて打ち明けられた。

「持病が再発してしまった。(睡眠薬の)マイスリーを飲んでいるが、なかなか眠れなくて困る。
私が体調を崩してしまったから、秘書官たちがすごく落ち込んでしまったんだ……」

その声はいつもより暗さを帯びていた。
持病とは第1次政権退陣の原因になった潰瘍性大腸炎のことだ。
その瞬間、私の中には当時の安倍の沈鬱な表情が浮かび上がり、「退陣」の2文字が脳裏をかすめた。

■長期政権の中で病に蝕まれていた

4日後の電話でも苦しみの声を漏らしていた。

「多分、今が(症状の)ピークだろう。
長年にわたり薬を多めに飲み過ぎてしまったことが原因かもしれない。
これまでの8年間、全力疾走だったから」

2012年の第2次政権発足以降、安倍は2009年に新薬として承認された
治療薬アサコールに助けられながら、大腸の炎症をコントロールしてきた。

また夜更かしがちだった習慣を改め、夜には携帯電話を別室に置き、
定期的にジムで汗を流す生活を心掛けた。
国会の会期中以外は首相公邸ではなく富ヶ谷の私邸に帰宅するようにし、
夏季休暇は河口湖の別荘で友人たちと過ごすなど、意識的にオンとオフの切り替えに腐心した。

腸の天敵はストレスであり、働き詰めだった第1次政権時代の教訓を踏まえた。

だが、8年近くに及ぶ長期政権を運営する中での負担が
知らず知らずのうちに安倍の体調を蝕んでいた。
さらには2020年1月以降、新型コロナという未知のウイルスへの対応に追われるなど、
前例のない難題が追い打ちを掛けた。

■人間ドックで異常な数値が

6月13日の人間ドックで炎症を示す異常な数値が出たことで、
医師から「秋に再検査を」と告げられ、7月中旬には安倍自身が持病の再発を明確に自覚する。
一気に食が細くなり、体重が誰の目にも明らかなほど落ち始めた。重病説が流れ出すのもこの頃からだ。

7月22日、安倍は、ステーキ店「銀座ひらやま」で自民党幹事長の二階俊博、
ソフトバンクホークス会長の王貞治らと会食した。
安倍は大の肉好きで、普段はTボーンステーキをペロリと平らげる。

だがこの日は、野球談議に花を咲かせる二階や王の笑い声に合わせながら、
密かに肉をサイコロ状に小さく切るよう店主に依頼していた。
7月30日には政調会長だった岸田文雄とパレスホテル内の日本料理店「和田倉」で
食事をしながら政局について幅広く意見を交わす予定だったが、1時間半で早々に切り上げている。