https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230616/k10014099311000.html

カタツムリ 最近見ないの なんでなん?

梅雨の生き物と言えば、カタツムリ。
最近、見かけましたか?

実は今、絶滅のおそれもあるんです。
背景には、とってもせつない事情が。
それを知れば、あなたにもカタツムリへの愛が芽生えるかも
最近見ましたか?
大阪の公園でカタツムリについて尋ねました。

「子供のころはほんまに登下校の時に石垣の所にひっついていたけど、最近あまり見かけない」(30代)
「幼稚園のときに遠足で見たのが最後」(小学生)
「妻と散歩に来るんですけど、最近見ぃひんなったなって、ちょうど話してたところ」(50代)

皆さん同じような答えでした。
たしかに、最近見ていないですよね。
「子供のころは、梅雨の時期にあちこちにいたのになあ」と懐かしがる様子も。
関西の半数以上が絶滅のおそれ!?
実はカタツムリのなかまは、亜種なども含め、日本国内でおよそ1000種類います。

関西には200種類ほど生息していますが、そのうちの半数以上の116種類が絶滅のおそれがあるとされています。

衝撃的な数字です。

カタツムリいなくなっちゃうの?
危機感を覚えた私たち取材班が訪ねたのは研究を続けて55年の“カタツムリ博士”。
滋賀県立琵琶湖博物館の中井克樹 特別研究員です。
中井先生によると、カタツムリが減っている背景には、カタツムリが好む落ち葉がたくさんある場所やしめった土壌が減っていることがあるといいます。

(中井先生)
「地面をはい回る種類にとっては落ち葉のカバーがとても重要。活動していないときに安心・安全に休める場所が残っているかが大切です」
高度経済成長期以降の宅地開発などにより、カタツムリが好む場所はだんだん失われて建物や道路などに変わり、カタツムリが安心して住める場所が減ってきたというのです。
緑は戻りつつあるのに…
一方で、最近は環境意識の高まりから、緑を植えようという動きが活発になっているはず。

都市公園などの面積が10年間で1割ほど増えているというデータも。

カタツムリが住みやすい場所も少しずつ増えているのでは?

(中井さん)
「緑豊かな環境が戻ってきても、いったんその場所からいなくなったカタツムリが別の場所から自力で入り込むことはなかなかできないんですよ」

え?せっかく住みやすい場所ができたのに?
どういうこと?

そもそもカタツムリは体から出す粘液を使って移動します。
その粘液を保つためには湿った環境が必要です。
乾いたアスファルトの上では、体の水分が奪われるため、移動するのはとても危険。

緑のある公園が増えたとしても、道路などで遮られていると、新たな公園に移って「すみか」とすることは難しいのです。
今いる場所でがんばります
住みやすい環境を求めて移動する生き物はたくさんいますが、カタツムリにはそれができません。

(中井先生)
「移動はできないし、したくもないでしょうね。いまいる場所はそれまで無事に過ごせた安全な場所だからあまり動きたくないんですよ」
今いる場所で、一生懸命、生きていく。
それがカタツムリの生き方。
環境と運命を共にするしかありません。
いったん「すみか」が失われると、そこにいたカタツムリはもう戻ってこないのです。

さらに、コンクリートやアスファルトなどが増えると、街全体の風とおしがよくなって、乾燥が進みます。

そうした街の乾燥が都市部で生きているカタツムリの命を脅かしていると指摘する専門家もいます。

私たち人間にとっては小さな変化ですが、カタツムリにとっては命にかかわる問題です。
カタツムリはどこにいる?
街なかですっかり見なくなったカタツムリ。
どこに行けば、元気な姿を見られるのか。

大津市で中井先生とカタツムリを探しました。
中井先生が案内してくれたのは、緑に囲まれた公園や神社です。
カタツムリが大好きな落ち葉やこけがたくさん。
さらに、湿気が多い雨上がりの日を選びました。
手には軍手。
カタツムリには寄生虫がいるおそれがあるので、素手で触らないほうがいいそうです。

捜索を始めておよそ30分。
すぐ見つかると思ったものの、なかなか見つかりません。