日本株に恒例の需給悪化、1兆円超のETF換金売り-年金再配分も

日本株の上値を抑える売り圧力が高まりやすい時期に入ってきた。上場投資信託(ETF)運用会社や年金基金に売り需要が発生し、右肩上がり相場の上昇ペースがいったん緩むリスクがある。

 日本株が33年ぶり高値を連続で更新した6月は、多くの年金基金は相場上昇で膨らんだ株式ウエートを引き下げるため、月末にリバランス(資産の再配分)する売り需要が発生する。7月に決算を迎えるETFの運用会社には、分配金に充てるために換金目的の売りを出す必要が出る。

 大和証券の吉田亮平氏は「6月30日を前に先回りをする動きが出始めてもおかしくない」と株式需給が早めに崩れるリスクを指摘する。ETFの売りと5月末に続く大規模な年金のリバランスに加え、多くの上場企業の株主総会が終わり配当金の再投資が出尽くすタイミングも重なるとみる。

 同証券によると7月上旬は主要なパッシブ型ETFの決算日が集中しており、推計で7日と10日が決算日となるETFが分配金支払いのために解消するポジションは合計で1兆1000億円超と過去最大になる見込みだ。

 株式相場の上昇は6月も急ピッチで、月末に年金売りが出る見込みだ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する国内株式の割合は年末の25.1%から27.4%に上昇したと同証券では試算する。国内株式の割合をポートフォリオ全体の25%に抑えるためには、5兆2000億円ほど売却する必要があるという。

 一方で、売り圧力による株価の下落は一時的と言う声もある。ピクテ・ジャパンの松元浩運用・商品本部シニア・フェローは、ETF分配金は「年中行事でもあるので、市場のかく乱要因とは見ていない」と話す。分配金が再投資に充てられることから、分配金がどこに向かうのかを注視しているという。

 みずほ証券エクイティ調査部の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、株式需給の緩みは相場の上値を抑える程度にとどまると指摘した。株価指数を高値圏に押し上げた好材料は出尽くし、米国株の連動性が高まっている状態だと述べた。

 主要7カ国(G7)の株価指数をみると、5月の月間上昇率は日本がトップ。背景には、東京証券取引所による株価純資産倍率(PBR)改善要請や企業の賃金上昇期待などを魅力と受け取った海外投資家を中心とした資金流入があった。低金利といったファンダメンタルズは堅調で、6月末からの需給の緩みが市場で消化されれば日本株は上昇基調が続くとの期待もできる。

 明治安田アセットマネジメントの永田芳樹シニア・ポートフォリオ・マネジャーは年金のリバランスやETFの売りを念頭に置きながら「7月上旬くらいまでは相場は調整する可能性は高い。ただ、そこはいい買い場になるのではないか」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-22/RWMYFOT1UM0W01