中国大都市の住宅所有者が売却急ぐ、不動産は蓄財手段との確信揺らぐ

https://news.yahoo.co.jp/articles/2d295e573c0e817d2332810082e5c6b24290b4da

(ブルームバーグ): 中国の住宅所有者は、不動産こそ信頼できる蓄財手段という数十年にわたる確信を失いつつある。上海のような誰もが憧れる市場さえも危うくしており、当局には経済成長の新たな源泉を見つけるよう圧力が強まっている。

中原地産の集計データによると、金融の中心地である上海の希望売却価格は3カ月連続で下落し、中国が昨年末に新型コロナウイルスのロックダウン(都市封鎖)から脱する前以来の低水準に落ち込んだ。

経済観察報の今月の報道では、在庫急増にもかかわらず、5月の同市の取引は3月に比べて3割強減り約1万6000戸にとどまったという。

住宅所有者や不動産業者、アナリストへのインタビューからは、不動産が常に中国で最も安全な投資先の1つだという信頼が薄れ、景気減速に拍車をかけていることが浮き彫りになった。

投機的な購入の抑制を目指す政策当局にとってこうした考え方の変化はある意味歓迎すべきことではあるものの、経済全体の勢いが失われつつある今、望むよりも深刻な不振に陥るリスクが高まっている。

カナダの金融会社、パワー・サステイナブル(上海)・インベストメント・マネジメントのジュン・リー最高投資責任者(CIO)は上海について、「ここでは売り圧力が実に強まっている」と述べ、「住宅所有者の間では、市場はピークに達したというコンセンサスに至ったようだ」と指摘した。

現金化

銀行員のソンさんは最近、上海の一等地である静安区のアパートを約1000万元(約2億円)で売却した。不動産ブームで現金化できる最後の機会の1つだと考えていると語った。

35歳のソンさんは、現在も家族で中国に他の不動産を所有しているが、不動産税の見通しや不動産セクターの長期的減速を理由に、このセクターへのエクスポージャーを減らしたい考えだという。

不動産調査会社の中国指数研究院がまとめたデータによると、中国の100都市の中古住宅価格は5月に少なくとも2022年以降で最大の下落を記録した。

E−ハウス・チャイナ・リサーチ・アンド・デベロップメント・インスティチュートの調査ディレクター、ヤン・ユエジン氏は、「上海は今、中国で最も低迷している中古住宅市場だ」と述べ、「全国的にも、流通市場の需給は悪化している」と指摘した。

原題:China’s Big-City Homeowners Cash Out as Wealth Dream Fades(抜粋)

--取材協力:Lulu Yilun Chen.

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