ロシアのプーチン大統領は27日、23~24日に武装蜂起した民間軍事会社ワグネルを率いたエフゲニー・プリゴジン氏の企業グループによる軍への食料提供ビジネスで、国家が年間800億ルーブル(約1350億円)を支払っていたと明らかにした。その上で「これらすべてを調査していく」と言明した。

プーチン氏はモスクワで開いた軍人との会合で、プリゴジン氏の企業グループ「コンコルド」との取引問題を提起した。コンコルドはレストランやケータリングサービス、クリーニング、建設など様々な事業を展開している。その一つである軍への食料提供について「誰も何も盗んでいないことを期待する」と発言した。

ワグネルもコンコルド傘下の会社だ。ウクライナ軍事侵攻に参加していたワグネルについて、プーチン氏は27日、国家が2022年5月からの1年間に862億ルーブル以上を支払ったと明らかにした。この資金は戦闘員の給与や成功報酬に充てられ、さらに保険金として1100億ルーブルも支払ったと説明した。

ワグネルが武装蜂起した原因の一つは、ショイグ国防相が6月末までに雇い兵と直接契約を結ぶよう命じたことにある。ワグネルも対象とし、プーチン氏も支持した。これに対してワグネル側は契約を拒否した。

ワグネルの戦闘員が国防省と直接契約すれば、プリゴジン氏は様々な利権を失う可能性があった。同氏は23日、通信アプリのテレグラムで、ショイグ国防相ら軍幹部を念頭に「ワグネルを解散させたい人がいる」と激しく批判した。

コンコルドやワグネルの資金はプリゴジン氏が自ら管理し、同氏しか資金の流れを把握していないとされる。ワグネルは国家の資金だけでなく、シリアでの軍事行動やアフリカ諸国での政権の警護サービスなどで多額の資金や天然資源開発の利権を得ていたと伝えられている。

プーチン氏はコンコルドの汚職問題を取り上げることで、「裏切り者」と批判したプリゴジン氏に対する国民の共感や評価を低下させる狙いがありそうだ。同氏は軍幹部の汚職や利権を「悪」と呼んで武装蜂起を正当化してきた経緯がある。

日本経済新聞 2023年6月28日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR27D400X20C23A6000000/