たしかに、スキャンダルが報じられることは、人気商売である猿之助にとって小さくない影響だろう。一方、「歌舞伎界の常識は、世間の非常識」といわれるまでに、不祥事を重ねながら「伝統芸能の数少ない担い手」という理由で、“寛容”な業界とファンに支えられて舞台に立ち続けている歌舞伎役者が多くいることを、猿之助は理解していたはずだ。

 2005年、中村七之助(40才)はタクシーの料金を払わず、駆けつけた警察官を殴打して公務執行妨害で現行犯逮捕された。2021年には、17才少年にわいせつ行為をしたとして、坂東竹之助(37才)が逮捕。また、中村獅童(50才)は、2006年、酒気帯び運転などの道交法違反容疑で書類送検された。全員、いまでも歌舞伎役者としての活動を続けている。

 だが、歌舞伎界とは異なる見方だったのは、両親だったようだ。

「猿之助さんは少し前からセクハラ・パワハラに関する報道が出ることは知っていましたが、ますます意気軒昂に主演舞台に上がっていました。それでも、実際の記事を見て、ご両親は猿之助さんに非常に厳しい態度を取ったのではないでしょうか。誰に叱られることもなく自由に振る舞ってきた“裸の大将”だった猿之助さんは、それに激しく動揺したのでしょう。

 父の市川段四郎さん(享年76)は、周囲への配慮を忘れない役者でした。弟子や裏方スタッフらに支えられて興行が成り立っていることを誰よりも理解していましたし、とても温厚な人柄でした。猿之助さんが、厳然たる上下関係を背景に、一門の弟子たちやスタッフらに働いた行為は、段四郎さんには許しがたいものだった。お母さんも同様だったでしょう。

 周囲からの特別扱いが普通だった猿之助さんには、陰湿なセクハラ行為を親から叱られることは耐えがたい苦痛だったのではないか。それまで自分の思うままに行動しておきながら、いざ自分が責められる立場に置かれそうになって、睡眠薬を“提供”するという短絡的な思考になったのでしょう」(別の歌舞伎関係者)

※女性セブン2023年7月13日号