「安倍さんなら…」幻影に縛られる自民 妥協許さぬ空気、神格化懸念

 2022年参院選の街頭演説中に安倍晋三元首相が銃撃され死去してから、8日で1年となった。政界では「安倍氏だったら、こうしていたはずだ」との言葉が飛び交う。安倍氏の「幻影」はいまも政治に影響を与えている。

 この日は東京都港区の増上寺で一周忌法要が執り行われた。その後は近くのホテルで安倍氏をしのぶ食事会があった。いずれも非公開だった。

 岸田文雄首相(自.民党総裁)は食事会のあいさつで「政権運営に当たれているのも、安倍元首相が築かれた基盤があってこそだ。受け継いだバトンを、しっかりと次の世代へと引き継いでいく」と語り、安倍氏の遺志を継ぐ考えを強調した。

 安倍氏の「幻影」が姿を見せた最近の例は、性的少数者に対する理解を広めるためのLGBT理解増進法だ。

 5月12日、自.民党本部。主要7カ国(G7)広島サミットを控え、成案化に向けて党内議論を重ねていた。「安倍さんは、この法案によって社会が分断されることを懸念していた。私は最後まで反対する」

 約60人が集まった会議室は熱を帯び、保守系議員が声を強めた。とりわけ目立ったのは安倍氏が率いた安倍派(清和政策研究会)で、20人ほどが詰めかけていた。

 やりとりは2時間以上におよんだ。取り仕切る新藤義孝政調会長代行らが最終案のとりまとめに向けた了承を得ようとすると、数人が「認められない」と机をたたき、新藤氏らに詰め寄った。

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