東京電力福島第一原発で、汚染水を処理した水を海洋放出する設備面の準備が完了し、政府が「夏ごろ」とする開始時期が迫る。6日夜には、福島県会津若松市で、国や東電との住民説明・意見交換会が市民主催で開かれ、会場から「漁業者との約束はどうなるのか」「本当に海洋放出しかないのか」など疑問や怒りの声が噴き出した。(片山夏子)
 市民有志の会が、「会津地方では広く住民を対象とした国や東電による説明や意見交換会がなかった」として、東電と国の担当者を呼んで開催。冒頭に実行委員会の千葉親子さん(75)は「本来ならば、海洋放出の当事者の国と東電が説明会を開き、住民の疑問や不安に応えていただきたかった」と苦言を呈した。
 資源エネルギー庁の木野正登参事官は、放出する処理水は国の基準以下に浄化したもので「国際原子力機関(IAEA)の報告書にあるが、人や環境に与える影響は無視できるほど小さい」と説明した。東電福島第一廃炉推進カンパニーの木元崇宏氏は「廃炉に向け、より安全な状態で溶けた燃料を取り出すには敷地がいる」と話し、敷地確保のために、海洋放出してタンクを撤去する必要があるとした。

◆放射性物質「総量も分からないのか!」
 これに対し、会津地方に住む農家や元教師、議員など5人の登壇者が次々と質問。「流す放射性物質の総量はどのくらいか」との問いに、東電の木元氏が「タンクの6割5分が二次処理が必要で、今の段階で言うのは難しい。浄化してデータを積み上げる」と答えると、「総量も分からないで流すのか!」「無責任だろう」という声が会場から飛び、賛同の拍手が湧き上がった。
 他の方法はないのか、タンクの置き場は作れないかという点については多くの疑問が出た。

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