ABCマートが5000人時給アップ、パート女性一人の声がきっかけだった「賃上げまでできるんだ」

 全国展開する靴小売店「ABC―MART」の千葉県内の店舗で働くパートの女性(47)が、労働組合に入り団体交渉したところ、パートら約5000人の基本時給が平均6%上がった。物価高なのに賃下げを求められ、一人で声を上げたのがきっかけだ。労組の活動に賛同する仲間が少ない現実にも直面しつつ、闘うだけでなく、働く条件を良くするために会社側と対話を重ねている。

◆怒り「非正規をばかにした対応」
 店長から昨年末、評価項目の変更に伴い、時給が20円下がり1010円になると言われた。今回の評価の変更も説明があいまいだった上、食料品が値上がりする中での賃下げに「非正規をばかにした対応」と怒った。女性は、年金が少なく介護が必要な両親の生活費に自分の稼ぎの全額を充てており、受け入れ難かった。

 本社の社員に「おかしい」と訴え、労働基準監督署に相談しても、状況は変わらない。社内に労組はなく、一人から入れる社外労組の存在を労基署に教わり、賃下げ撤回を求める団交ができると知る。労組の「総合サポートユニオン」(東京)にたどり着いた。

 ユニオンは今春から、企業の枠を超えた個人加盟の労組が集まり非正規の一律10%賃上げを求める非正規春闘を始めようとしており、参加を決めた。「賃上げまでできるんだ」。組合活動は驚きの連続だった。

 店舗前などでの街宣がテレビなどに報じられ、ツイッターでも発信を強める中、会社からユニオンに「女性の賃下げを撤回する」と連絡が入った。だが賃下げに落ち込んだ同僚の表情が忘れられず「他の人も撤回しないとおかしい」と納得しなかった。一人で15分早く仕事を終えるストライキもした。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/262749