中学校の理科の授業で行われる硫化水素を発生させる実験に参加した生徒が吐き気や頭痛などを訴え、病院に搬送される事例が相次いでいる。

 明確な原因が不明な中、一部の学校では教員が実験を代行したり、動画視聴に切り替えたりするなど、実施を見送る動きも出ている。

 「十分に気をつけたつもりだったが事故を防げなかった。指導の不十分さがあったと考えている」。福岡県筑前町立三輪中の江上裕太郎教頭(52)がうなだれた。

 同校では6月、2年生36人が理科室で、鉄と硫黄の化合物に塩酸を加えて硫化水素を発生させる実験を実施したところ、16人が体調不良を訴えて搬送された。いずれも軽症で、すでに回復している。

 この6日前には、同じ実験を行った同県飯塚市の市立小中一貫校頴田(かいた)校で10人が搬送されていた。三輪中でも事故を踏まえ、使用する塩酸を通常より薄くして硫化水素の発生を抑えたほか、換気も徹底していたという。

 硫化水素を発生させる実験は1学期に行う学校が多い。今年は5月以降、少なくとも福岡県を含む6都県の8校で計79人が搬送されており、文部科学省が都道府県教委に細心の注意を呼びかける事態となっている。

 明確な原因がわからない中、現場では実験を見送るケースも出ている。16人が搬送された三輪中では別のクラスが、緊急措置として実験動画を見て学んだ。5月に中学生13人が搬送された秋田県にかほ市教委は、教員による実験代行や動画視聴も選択肢に、対応を検討するよう通達。1校で教員が実験を代行した。担当者は「意義とリスクが両方ある実験のため、各校の判断に委ねることにした」と話す。

 理科実験に詳しい秀明大学校教師学部の清原洋一教授は「実験のリスクは無視できないが、生徒が化学反応を実体験して得られる学びも大きい」と指摘する。その上で「多くの温泉や火山を抱える日本に住む以上、硫化水素の臭いや危険性は身をもって学んでおくべきだ。教員が予備実験をして安全性を確認するなど、丁寧な準備が必要だ」としている。https://news.livedoor.com/article/detail/24636580/