Aさんは高校卒業後、同社とは別の自動車工場で働き、自動車整備士の資格を持っていた。

 あるとき、ビッグモーターで働いていた知人から、同社は「高給だ」と聞いて転職。整備工場で働くようになった。

「勤務から4、5日くらいして、工場の上司から『Aさん、ちょっと』と呼ばれました。上司はスマートフォンを出してLINEのアプリを私に見せました。そこには10秒くらいの動画があって、『渡せないけど、こうやって修理を大きくして“保険”が増えるように』と指示されました」

 動画は、車体の一部をサンドペーパーで傷をつけているものだった。Aさんは、車体を傷つけて保険金を多く請求するということがすぐにわかったという。

「自動車整備士の資格は苦労して頑張って取りました。わざと傷つけるというのはお客様への背信だし、保険金を請求するというのは詐欺になりかねない。資格だって取り消されるかもしれません」

 Aさんは不安になり、

「『こんなことして大丈夫ですか』と聞くと、上司は『うちはこういう方向でやっている。ノルマが厳しい分、給料もアップする。細かいことは気にするな。上も了承してやっていること。うちのような大手がやっているということは、中小の業者だって同じだから』と。それを聞いて絶望的な気持ちになりました」。

 さらに上司は、タイヤに工具を差し込んでパンクをさせる、靴下にゴルフボールを入れてボディーをたたいてへこませる、ドライバーで車体に傷を入れる――など、様々な手法をAさんに指示して、

「君は(自動車整備士の)資格があってきているから、これくらいわかるよね。うちは本当にノルマがきついんだよ。LINEを見ていればそのうちわかるから」

 と激しい口調で言われたという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b33f380878c8f94b2c8aeaa0e058097e42118d16