7月21日に米国コロラド州で開催された「第14回アスペン安全保障フォーラム」では、ウクライナの反転攻勢が重要なテーマになった。

 多くの参加者から「ウクライナの反攻はまだ始まったばかりで終わっておらず、ロシアが戦争に負けることは避けられない」という趣旨の発言があった。

一般的に攻勢作戦における失敗とは、攻撃を行い敵よりも大きな損害を被ったにもかかわらず、攻撃を続けることだ。

 しかし、ウクライナ軍の反転攻勢は違う。

 ザポリージャ州のオリヒウ~トクマク正面における緒戦において、手痛い失敗を犯してしまったが、その後の柔軟な戦術変更により態勢を立て直している。

ウクライナ軍は兵士の命を大切にし、被害を最小限に抑えながらロシア軍の戦力を削ぐ「阻止作戦(Interdiction Operation)」を重視している。

ウクライナ軍は今、この「阻止作戦」の段階にいる。

 ウクライナ側がこの段階で成功を収めたと感じたら、次の段階、フェーズ2に移るだろう。

第1線以降のロシアの守備ラインは、現時点ではほぼ無人であることを示唆している。

 ロシア軍は、彼らが名付けた「ゼロライン」(ウクライナの支配地域とロシアの支配地域との直接の境界線=現在の接触線)における攻防を重視している。

ゼロラインの後方から前線に部隊が移動・配置されている。ウクライナの前進に対抗するため、ロシア軍予備兵力も前線に移動・配置されている。

 これらの進展は、10個以上の旅団からなるウクライナの攻撃的機動打撃部隊の大部分が投入されていない状況にもかかわらずだ。

戦線の広範囲をカバーする人員を欠くロシア軍は、少なくとも戦闘が起こる場所でウクライナの部隊と交戦することを選んでいるようだ。ロシア軍の予備部隊が前線に投入されている状況だ。

 結果として、ロシア軍第一線の後方には部隊がほとんどいない状況だ。

ウクライナ側は兵力と装備を温存するため、ロシア軍を前線の「キルゾーン」に誘致し、通常ならもっと後方にいるはずの砲兵を引っ張り出した。

このため、ロシア軍の砲兵損失が非常に大きくなっている。

現在、ロシアの防衛は脆い状態になっている。つまり、ゼロラインで過負荷がかかり、大損害を受けているのだ。

 ウクライナ軍がロシア軍の歩兵部隊と砲兵部隊を攻撃し続けることで、突破口が開かれる前に防衛態勢が空洞化する可能性がある。

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