「汚い、臭い、暗い」といった公共トイレのイメージを払拭(ふっしょく)しようと、日本財団と東京都渋谷区が区内17カ所で進めていたトイレ改修プロジェクト「THE TOKYO TOILET」が完了した。原宿に建つ一軒家をイメージしたトイレなど、バリアフリーに配慮しながらもユニークなデザインのトイレが多いのが特徴だ。プロジェクトの一環で制作された映画「パーフェクトデイズ」は、主演の役所広司さんがカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したことでも注目を集めている。

 プロジェクトは、「ユニクロ」などを運営するファーストリテイリングの柳井康治取締役が、「障害の有無や年齢、性別などを問わずに誰もが快適に使える公共トイレを作ろう」と発案。柳井氏から相談を受けた日本財団が、区と社会課題解決に関する連携協定を結んでいたことから、区内のトイレでプロジェクトが実施されることになった。

 トイレの設計を担当したのは、安藤忠雄さんや隈研吾さんなど国際的に活躍する建築家やデザイナーら16人。2018年から始まり、今年3月までに老朽化が進んでいた全17カ所の公共トイレの改修を終えた。原宿に建つ古き良き一軒家をイメージした「神宮前公衆トイレ」(同区神宮前1)▽時間帯により照明の色や照らし方が変わる「広尾東公園トイレ」(同区広尾4)――などクリエーターのこだわりが感じられる設計になっている。全てのトイレで車椅子の利用も可能だ。

 プロジェクトの一環で区の公共トイレの清掃員の日常を描いた映画「パーフェクトデイズ」も制作された。「ベルリン・天使の詩」などで知られるビム・ベンダース監督がメガホンを取り、5月の第76回カンヌ国際映画祭で、主演の役所さんが男優賞を受賞し、世界中から注目を集めた。

 6月23日には、日本財団から区にトイレの維持管理を引き継ぐ「譲渡式」が行われた。日本財団の笹川順平・常務理事は「今後は区に観光資源という観点からもトイレの維持管理をしていただきたい」とあいさつ。長谷部健区長は「公共トイレをきれいな状態で維持するとともに、誰もが大事に使っていくという意識向上に取り組みたい」と話した。

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