上述のように、医療の専門家の圧倒的多数の意見によると、報道されている事実経過では、〈向精神薬の中毒死〉はほぼありえないと言われています。つまり、睡眠剤の服用という行為じたいには、(上述の東京高裁の裁判例と違って)死の危険性がほぼ存在しなかった(いずれ目が覚める)ということなのです。

 だとすると、死亡の危険はどのような行為から生じたのかが改めて疑問になりますが、報道では窒息死の兆候もなかったとされており、まったく不明です。

 つまり、〈中毒〉による死亡という検察側の主張は、法廷で科学的に反証される可能性が高く、また、他の可能性も不明だとすると、結局、自殺行為は〈未遂〉ということになるのではないでしょうか。

 だとすると、猿之助被告の罪責も自殺幇助未遂罪(刑法203条)とされ、刑法的には比較的軽い犯罪となって、執行猶予の可能性がかなり高くなるのではないかと思います。(了)

https://news.yahoo.co.jp/byline/sonodahisashi/20230729-00359871